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★概要

NORDOST VALHALLA(ノードスト・ヴァルハラ)は、アメリカのNORDOSTの製造するインターコネクトケーブルである。かつてはNORDOST社のフラッグシップとして国内外を問わず名を馳せたモデルであるが、現在では上位のODINや後続のVALHALLA 2がラインナップに名を連ね、初代VALHALLAはトップラインではなく中級モデルとしての役割を担っている。

日本国内では、かねてよりPurist DominusやTRANSPARENT Referenceなどと並び、国外勢を代表する存在として広く知られており、販売開始より10年以上が経過した現在も、STEALTHのIndraやJORMA PRIMEと並び、最も人気のある外国産ラインケーブルの1つである。特に、音場型・寒色系のケーブルとしては、STEALTH Indraと評価を二分してきた。50万円クラスを代表するケーブルの1つでもあり、ESOTERICのMEXCELやAETのEVIDENCEなど、同価格帯の国産ケーブルにとって高い壁となっている存在でもある。

※50万円クラスとは、1m・XLR仕様の国内定価が50万円前後のケーブル群を指す造語(30万円台~70万円台と、幅はある設定)。NORDOST VALHALLAをはじめとする海外のハイエンドとESOTERIC 7N-DA6300をはじめとする国産のトップラインが衝突する価格帯で、100万円クラスとは違った意味で激戦区と言える。

[価格]

国内参考価格:530,000円(XLR 1m、税別。出典:エレクトリ)

[Specification]

INSULATION:High purity class 1 extruded FEP*

CONSTRUCTION:Precision Micro Mono-Filament design

CONDUCTORS:7 x 24 AWG optimized diameter solid core

MATERIAL:78 microns of silver over 99.999999% OFC

CAPACITANCE:22.0pF/ft

INDUCTANCE:0.13_H/ft

PROPAGATION:80% the speed of light

OVERALL SHIELD:97% Braid

[参考サイト]

http://www.nordost.com/products/analog-interconnects/valhalla-reference/valhalla-reference-analog-interconnect.php

[外見・取り回し]

極めてシンプルな外見。このシンプルさは、装飾的な外見の外国勢の中にあって、際立っていると言えよう。純白の導体にゴム被覆のプラグという構成で、NBS BLACK LABELとはまた異なる機能美を感じさせた。筆者個人としては非常に好みであるが、高価なわりに細くて飾り気のない外観であるため、人によっては満足感を得にくいかもしれない(STEALTH Indraなどと比べると顕著)。

取り回しは、見た目通りの良さ。下手な国産のミドルエンド以上に扱いやすい。が、JORMAのケーブルなどと比べると捻りに苦労するだろうから、長さをギリギリまで削る買い方は勧めない。

★音質レビュー

[タイプ]

音場型・寒色系のケーブル。国内ではSTEALTH Indraと評価を二分してきた存在。Indraと比べるとストイックな音作りをしており、あちらが柔らかな質感と粒子感を前面に出しているのに対し、VALHALLAは音の鋭さとキレを前面に出している。

音場は、広さ・形状共にバランスが良い。ただ、前方への広がりはやや狭めで、若干音像が前に出るタイプである(無論、音場型の範疇内での話であり、NBSやPurist Audio Designのような出方はしない)。この点は、IndraよりもSakra的な部分かもしれない。この音場を、キリリと引き締まったVALHALLAの音像が縦横無尽に舞い踊る様は、なかなかに爽快なものがある。

また、温度感については、導体がコッパーベースであるためか、IndraやSakra、SILTECH SNOW LAKEなどに比べると、高い温度感が認められる。ただし、銅メインのケーブルとしては恐らく最も温度感が低い部類に含まれ、JORMA PRIMEと比べると2段階、ORIGOと比べても1段階は低い。

ライバルと言いうるJORMA UNITYとの比較で言えば、UNITYが純コッパーらしい音出し(情報量>音の分離、粒子感がありソリッドな音像、空間の広がりはそこそこ)をするのに対し、VALHALLAの場合はよりスピード感に優れ、像は細身でキレ味豊か、そして音場はより広い、といったテイストではないかと思う。UNITYは、海外勢としては国産の50万円クラスのピュアコッパーXLRケーブルに近い音を出すケーブルだと思うので、その点でも参考になれば幸いだ。

 

[基本性能]

基本性能総合:ハイエンド入門

解像感:4

情報量:3.5

S/N感:4

情報コントロール力:4

周波数レンジ感:4

帯域バランス:4.5

汎用性:4.5

音の分離感:5

(評価:MAX>5>4.5>4>…>1)

我々のサイトでは、50万円クラスの筆頭格にして、ハイエンド入門クラスのリファレンスのうちの1本として位置づけている(※1)。別格のJORMA ORIGOを除けば、50万円クラスをリードする実力を誇るケーブルであり、特にその反応速度とリズム感の良さは同価格帯でも敵無しの水準。低域まわりがもたつくケーブルが多い50万円クラスにあって、やたらスピーディな印象が際立つが、きちんと聴き込んでみると、早い音と遅い音の描き分けに長けることが分かる。

スペック表にもあるように、VALHALLAの伝達力は非常に高い。コッパーベース・シルバーコーティングの導体は信号を高速かつ正確に伝達し、音に反映する。まぁ簡単に言ってしまえば、クロックの友のようなケーブルである。上でも述べた話だが、このスピード面における正確さとリズム感の良さが、VALHALLAの最大の長所ではなかろうかと思う。

また、帯域バランスに関しては「低域が弱い」という非難が根強いが、巷で言われるほどバランスが悪いわけではない(このあたりは、VALHALLA ACとも異なる点)。主観だが、VALHALLA XLRの鳴り方自体は100万円クラス以上のケーブルにも近いものがある (よって汎用性は高評価。無論、スケール感や周波数レンジの広がり感は劣るが)。スーパーハイエンドを多く見てきて感じることは、いわゆる50万円クラスの中級ケーブルの多くは、低域を不自然に誇張し過ぎであるということ。低域のレンジや解像度が伴わないにも関わらず量ばかり増やすと、音の速度感や帯域バランスが失われ、みっともない音になる。20万円以下の下位ラインとの差別化を図りたいのは分かるが、物量に任せて低域をブーミーに膨らますだけでは、急速な陳腐化は免れないだろう。そして、そのようなケーブルとVALHALLAを比較し、VALHALLAの低域を「痩せている」と評するのは適切ではないと筆者は思っている(※2)。ただ、Indra V.10やSILTECH SNOW LAKEなどと比較して周波数レンジがナローであるというのは仰る通りだろうし、スーパーハイエンド並の広帯域とスケールを求める方にとっては、VALHALLAは選択肢とはなり得ないであろう(そういう意味では、痩せているのではなくレンジそのものに限界がある、というのがより適切な評価かと思う)。

逆に、情報量に関しては、VALHALLAは巷で言われるほど優れているとは思わない。中〜高域の解像感はかなりのものだが、IndraやBLACK LABEL IIなどと比べるとどうしても低域の解像感と音の数に劣って聴こえる。音の分離感は非常に良いが、そもそもの情報量が少ないために良く聴こえていることは無視できない。また、速度面でのコントロール力は優れるが、ステージ展開における情報コントロール力が優れるかは疑問が残る。ステージが広く情報量もさほど多くないため、すっきり見晴らしがよく聴こえるが、特に中〜高音については時折Indraのような撒き散らし方もしている。単に聴く分には問題ないが、やはりTRANSPARENT OPUSやSTAGE III GRYPHON並みの力量は感じないし、同評価にはできないところである。

1このVALHALLAとJORMA UNITYは、50万円クラスのリファレンス的存在だと思っている。

2どちらかといえば高域過多に聴こえがちなVALHALLA Power Cableと混同されがちだとも思うため、その点も注意が必要だと思っている。

[主な特徴]

1.抜群のスピード感とキレ味

VALHALLAの最大の特徴であり、存在意義と言っても過言ではないと感じられる要素。スペック表からも分かるように、NORDOST社はケーブル開発の中で信号の伝達速度を一大テーマとしており、そのこだわりようは音からも強烈に感じられる。立ち上がりの速さと消え際のキレ味が半端ではない。特にVALHALLAの場合、ODIN(試聴のみ)以上にこの点を個性として音に顕在化させてくると感じた。ODINは、TRANSPARENTやJORMA DESIGNなど、個性を超えて高性能・高バランスを志向する超ハイエンドメーカーが既に世界に君臨していた2008年頃にリリースされたのに対し、VALHALLAの登場は2000年頃で、Purist Audio Design(PAD)やMITなど、個性派と評しうるメーカーがまだまだ業界を牽引しつつあった時代だったと記憶している。そんな時代背景も無視できないとは思うが、結論を言えばVALHALLAのキレ・スピード面・リズム面のポテンシャルと聴かせ方の巧さは、今なお世界屈指と言えるのではなかろうか。個人的には、スピード・リズムに関してはSTAGE III GRYPHONと並び評すべき存在で、あちらは低域が、こちらは中〜高域が、全体を牽引していると感じる。

2.音場の開放感・透明感

これは、巷でVALHALLAが音場型のケーブルとして語られる背景だと思うが、VALHALLAの音場は広さ以上に見晴らしの良さと開放感が際立つ。率直な感想を言うならば、広さ自体ではIndra V.10やSILTECH SNOW LAKEに遅れを取るであろうが、こと見晴らしの良さに関しては、VALHALLAはこれら以上の聴かせ方をするであろう。Indraに代表されるような銀をメイン使用したケーブルは、その情報量と粒子感がゆえに空間いっぱいに音が舞い散りがちである。それが良さでもあるのだが、空間の見晴らしという観点からすると、音像が引き締まっていて音も散りにくいVALHALLAの方に軍配が上がるというのは、我々の共通認識。全体性能については、同様に驚異的な空間透明度と音の分離を誇るSTAGE III GRYPHONに軍配が上がるが、空間がごちゃごちゃしてゆとりが感じられない、あるいは、もう少し像のヴォリューム感を抑えて引き締めたいといった悩みを抱えている方には、特にこちらをお勧めしたい。

3.引き締まって無駄のない音像

これについては、1で述べたキレ味の良さ、2で述べた見晴らしの良さとも重複する要素であるが、せっかくなのでもう少し違った観点から少し述べたい。VALHALLAの音像は、まさに引き締まったアスリートの肉体さながらである。高密度で無駄が少なく、鞭のような鋭さとしなやかさが備わっている。JORMAのケーブルなども比較的スマート・高密度だが、VALHALLAはこれらの上をゆく。音の立ち上がりは非常に速く、時として刺すような、あるいは一刀両断するようにステージに展開され、そして消える。もう少しダイレクトな表現をするならば、冷徹、寒色的そしてストイックである。率直に申せば、VALHALLAを好きになれるか否かは、この無駄や遊びの少なさと余韻の乏しさを良しとするか悪しとするかによると思う。ストイックで原音忠実という評価もあるが、上位のODINも試聴し、また、TRANSPARENT OPUSをはじめとする、本当の意味でハイバランス・高忠実なスーパーハイエンドケーブルを知る身としては、その観点からVALHALLAに過度の期待を寄せるのは少々危険だと感じている。むしろ、積極的にその個性を楽しむスタンスの方が、かえってVALHALLAの良さが分かるのではないだろうか。

[ポジショニング]

予め申し上げておくと、どのインコネをどこに入れるのがベストな選択肢であるかは、一般論以上に具体的なシステム構成からお考えになるべきで、こちらでの説明はあくまでついでのものであることをご理解願いたい。以下、本文。

何だかんだと言っても、その役割は音像を引き締め、温度感も引き締め、そしてスピードやリズム感も引き締める、といった類のものであるため、そういった用途から必要な箇所に入れてゆくべきだと思っている。あとは程度の問題で、後段に入れてやり過ぎだと感じたならば、前段のケーブルと入れ替えてもよかろうし、その逆も然りだと思われる。かなりはっきりとした方向性をもったケーブルだとは思うが、使い方次第では効率よく問題を解消できるので、性能・個性をきちんと見極めた上で導入するのがベストだろう。

[主な比較対象]

SILTECH SNOW LAKE(格上のライバル)

STEALTH Indra V.10(格上のライバル)

JORMA DESIGN ORIGO(格上のライバル)

JORMA DESIGN UNITY(ライバル)

STAGE III CONCEPTS A.S.P. REFERENCE GRYPHON