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★概要

 Seraphimスピーカーケーブルは、ZenSatiが製造・販売するスーパーハイエンドケーブル。銅リボンに金メッキを施したものを束ねた外観は非常に特徴的。OPUS(TRANSPARENT)と同様に、超弩級というカテゴリに含み得るケーブル。4,445,000円/2.5m(税別)という価格設定は、同長のOPUS(但しMM2迄)やNORDOST ODINよりも高価であり、筆者がこれまでに所有したケーブルの中で最も高価である。Wilson AudioのSashaやB&W 800SDより高価だといえば、どれだけ異様な価格設定であるかがご理解いただけるとは思うが、一方でスケール的に(たとえば)WilsonのALEXIAが置けない部屋を想定するなら、無理をしてALEXIAを導入するよりもSasha 2 + Seraphim SPで鳴らした方が音が良いという実情もあり、こういった事情がケーブル類のコスパに関する議論を複雑化させている。

あまりに高価なケーブルなので、値段に関する義論が先に立ってしまったが、音質自体は極めて良い。特に、音場の広がりと音の生々しさのバランスは素晴らしく、替え難い魅力となっている(詳しくは後述)。

尚、現在はSilenzioという上位種が登場しており、フラッグシップの座からは外れているという噂もあるが、ZenSati側がSilenzioに関してほとんど公式なアナウンスをかけておらず(現時点でどの程度の完成度なのか、あるいはそもそも本当に投入されるのか)、したがって見方によっては現在もSeraphimがフラッグシップと考えることも可能。詳しいことは、代理店に問い合わせてみてください。

[価格]

4,445,000円/2.5mペア(税別)

[Specification]

N/A

[参考サイト]

ZenSatiの製品ページ

[外見・取り回し]

 なんといっても、ゴールドメッキの導体そのままな外見が非常に印象的である。シールドなど糞食らえといった外見であり、たしかに価格に対するS/N感も良いとは言えないが、それを補って余りある音の魅力は素晴らしい。

扱いは、このクラスとしては容易な方だと思われる。重さがさほど無いためだと思われるが、曲げ・捻り共にOPUSは無論、Enigma Signature(Kharma)やMANTIKOR(Stage iii Concepts)よりも容易。もっとも、このクラスになると、扱いも含めて完璧にオーダーメイドされる方が多いと思うので、私の言が参考になるか否かは不明ではある。

 

★音質レビュー

 SPケーブルについては、ACやXLRに比べてサンプル数が少ないので、スコアリングは行いません。代わりに、ケーブル間の比較を織り交ぜつつ、レビューします。

[概要・タイプ]

 このケーブルは、明快な方向性をもっている。個々の音像のインパクトよりも音の数と広がりを意識したケーブルで、DREAM(STEALTH)やVALHALLA(NORDOST)の良さを引き継ぎ、更に発展させたような存在だ。現時点における音場型の筆頭格とでも評すべきケーブルだと言えよう。詳細は以下で述べる。

1.サウンドステージ

私の知る限り、Seraphimは最もサウンドステージを広げるケーブルだ。特にSPケーブルの効き目は凄まじく、XLRを2セット入れた場合よりも更に効く。Enigma Signature(Kharma)やMANTIKOR(Stage iii Concepts)のような15,000ドルクラスは無論、OPUS(TRANSPARENT)と比べても段違いである。インコネや電ケーを含めるなら、ZenSatiはSeraphim、Cherub、Angelと聴いてきたが、サウンドステージを広げたい方はZenSatiを入れておけば音場の広がりに関して不満は出ない、と断言できるレベルである。中でもSeraphimは奥行きに関して頭ひとつ抜きん出ている。これで狭いと感じるならば、ケーブル類ではなく部屋かSPの見直しが必要だろう。

とはいえ、サウンドステージの広がりはZenSatiのケーブルに共通する強みであり、TRANSPARENTやSTEALTHを筆頭に競合も多い話だ。筆者はむしろSeraphimのSeraphimたるすごさは、以下の「温度感」だと考えている。

 

2.温度感

Seraphimが、他の音場型ケーブルと比べてもしたたかな点は、しっかりと温度感を出せる点。一言で述べれば、音が生々しいのだ(アレグロ電源ケーブルにあるように)。実は、音場を広げるタイプのケーブルの多くは、音像のインパクトを後退させるのみならず音の温度感をも下げてしまう場合が多く、熱気と迫力の双方が失われた結果として「スカスカ」という印象を与える場合も少なくない(無論、「暑苦しさ」を排除したクリアーな音の広がりこそ「美音」とする見方も、同等に有力)。ただ、Seraphimに関してはこの見方は当てはまらず、音場は広がる上、音の生気や熱気もきちんと再現される。もっと言えば、前例が無い程に左右・奥行きを広げることができた(ここまでやってもケーブルとして破綻しなかった)のは、Seraphimが生音の温度感を損ねない力量を備えていたからだろう(但し、迫力やインパクトは損なわれるが)。この性質はクラシック、それも編成が大きくなればなるほど発揮される。

もっとも、SeraphimがDREAMやVALHALLAよりも遥かに高価なケーブルであるのは事実だから、そのあたりのクオリティについては「当然」とお思いになる方も多いやも知れないが、同程度にハイエンドのOPUS(TRANSPARENT)や、したたかさが光るMANTIKOR(Stage iii Concepts)をもってしても、Seraphimほどうまく音場の広がりと音の熱気を両立することはできていない。その事実をもって、この性質をSeraphimの特筆すべき点としたい。

尚、寒暖とは別に明暗に関して補足するなら、Enigma Signature(Kharma)などにあるような超ライトなテイストではないが、全体的に明るく、そして軽やかな音。寒暖のみならず明暗を含めても、重苦しい面は殆ど無いといってよいだろう。

3.情報量

他の音場型ケーブルと同様、Seraphimも情報の量感はたっぷりだ。描き方としては、音像の細部までクッキリハッキリというよりも、ステージを音で埋め尽くそうとするタイプである。OPUSみたくべらぼうにダイナミックレンジが広いというよりも、場に満ち満ちる音の量感で聴者を満足させる。

[比較レビュー]

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1.OPUS MM (TRANSPARENT) vs. Seraphim (ZenSati)

Magnum OpusとZenSati Silenzioの登場によってフラッグシップからは外れたが、依然として最高レベルのケーブルとして君臨している両者。また、2015年春の時点で筆者ロメオが所有した経験のあるケーブルの中で、最も高価なものである。

OPUSとSeraphimを比べて強く感じるのが、Seraphimが音楽性豊かで性能も良い最上級のケーブルであるのに対し、OPUSはもはやケーブルの域を超えた一種の機器とでもいうべき存在だということ。音自体はOPUSの方がニュートラルでオールジャンル対応だが、運用上の使い勝手はSeraphimの方が良い。というより、ケーブルの常識の範囲内で対応できる。詳細は、OPUS MM SPケーブルのレビューを参照。

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2.Seraphim (ZenSati) vs. Enigma Signature(Kharma)

Enigma Signatureは、オランダ・Kharma(カルマ)のハイエンドケーブル。価格的にはSeraphimが倍であるが、どちらもヨーロッパで屈指のスピーカーケーブルである。尚、Enigma SigはSILTECH社製の導体を用いている点を特徴としており、素材は金と銀の合金。対するSeraphimは、銅リボンを金メッキしたものを束ねている。

いずれもステージの広がりと情報の量感をウリにしているケーブル。Seraphimの方が暖色寄りで、Enigma Sigの方が明るい音。色に喩えるなら、Seraphimが金で、Enigma Sigが檸檬色。どちらも、重苦しい雰囲気とは無縁だ。

サウンドステージはSeraphimの方が広い。特に、奥行きは圧倒的にSeraphimが深い。広大な音場を音で満たす様は圧巻。Enigma Sigも、どちらかといえば音場を満たそうとするケーブルだが、Seraphimほど突き抜けてはおらず、多少なりとも音場と音像のバランスをとろうとする印象だ。

スピード感はEnigma Sigの方がある。導体の銀成分が効いているのであろう。但し、SILTECHやArgento Audioのようにガンガンと低音をブーストしてゆくわけではない。むしろ、春風がスッと吹き抜けるかのような軽やかなタッチが特徴だ。対するSeraphimは銅線に金メッキであるから、積極的にスピードを上げてゆくタイプではないし、それを期待すべきでもないだろう。このあたりを気にする方は、機器であればSpectralやGoldmund、SPであればWilson AudioやB&Wのような、単体でもそれなりにスピード感を出せる機器と組み合わせるべきだろう。

総括すると、やはり温度感からくる生々しさとサウンドステージの広さからくるスケール感がゆえに、Seraphimの方が1ランク上のケーブルである。しかし、SPケーブル1セットに400万円強というのは常軌を逸した価格設定であり、そのあたりを考慮するならばEnigma Sigの方がまだ現実的なケーブルだと言える。ただ、この価格帯になると、競争相手は他のケーブルのみならず、ルームの改造や電源系の改修をも含むため、慎重な検討が必要。

 

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3.Seraphim (ZenSati) vs. MANTIKOR (Stage iii Concepts)

MANTIKOR(マンティコア)は、Stage iii Conceptsのフラッグシップ。同価格帯でもトップクラスの聴感S/Nと3次元的ステージ展開が特徴。ステージの容積は、特に左右の差からSeraphimが圧倒的だが、一音一音の精度や陰陽のコントラストはMANTIKORの方が良い。明確な方向性を示しつつ、圧倒的に華やかな音で聴者を魅了するSeraphimと、地味で時としてつまらなくも、音場・音像のバランスやノイズの低減といった性能面でシステムを下支えするMANTIKORは、まさに対照的な二者だ。後述の通り、絶対的な格はSeraphimが勝ると思うが、選定時には、それ以上に両者の性格をきちんと見極めることが求められるだろう。

両者の選択は、聴者がどこまでシステムの耐ノイズを重視するかで決まってくるだろう。筆者はAVALON DIAMONDユーザーであり、何れの恩恵をも理解できる環境にあると考えているが、その上で述べるなら以下のようになる。「プラネタリウムの如き、溢れんばかりの音の絶景を堪能したい方にはSeraphimを、漆黒の闇から浮かび上がる、掴み取れんばかりの音像を堪能したい方はMANTIKORを、それぞれ勧める」。

上述の通り、よりサウンドステージを広げるのはSeraphimの方だし、よりノイズフロアを下げるのはMANTIKORの方だ。音色はSeraphimの方が明るく暖かいが、音像の粒立ちと輪郭の明瞭さについてはMANTIKORの方が良く、音のリアリティは甲乙つけがたい。

スピード感はほぼ互角。但し、MANTIKORの方が低重心で、かつ重低音まで丁寧に描写した上でSeraphimと互角のスピード感を出していることから、ポテンシャルはMANTIKORが上だと思われる。導体が銀とパラジウムの合金であることも、無関係ではないだろう。

総括すると、基本性能的にはほぼ互角で、MANTIKORが倍以上の価格差を埋める奮闘をみせている。但し、最終最後、システムを煮詰めていった際の音の格については、Seraphimが勝るのではないかと思っている(筆者自身、そもそもの部屋のポテンシャル的に、最終最後までシステムを煮詰めたとは言い難いのは承知だが)。というのも、聴感S/NをはじめとするMANTIKORの長所というのは、機器やSPのグレードを上げてゆく過程で自然と得られるものだし、更にいえばMANTIKORにはOPUS(TRANSPARENT)というほぼ純粋な上位互換が存在する。対して、Seraphimにある圧倒的な個性は、どこまで行ってもSeraphim(あるいはSilenzio)からしか得られない感が強い。まるで壁面の存在を消し去らんばかりにサウンドステージを押し広げるSeraphimの力は、試した限りどんなシステムにおいても確認できた。特に、フルオーケストラの再現における熱気と音の奔流は見事である。