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★概要

REFERENCE XLは、アメリカのTRANSPARENT社の製造・販売するインターコネクトケーブルである。また、OPUSシリーズの登場以前はフラッグシップであったシリーズでもあり、現在もTRANSPARENTの100万円クラス(※1)として、50万円クラスのREFERENCEと共に同社ラインナップの中核をなすシリーズでもある。国内では、Purist Audio Design(PAD)のDominusやMITのORACLEシリーズなどと共に、90年代からハイエンドケーブルの代名詞的存在として君臨してきたシリーズで、数度のマイナーチェンジを経つつ、100万円クラスの競争が激烈となっている現在においても同クラスの中核として生き残っている実力機である。最近では、STEALTH Sakra、STAGE III GRYPHON、そしてZenSati Seraphimなど、100万円クラスでもこのREFERENCE XLと同等か、あるいはそれ以上の存在が現れつつあると感じるが、軽く10年以上にわたって同クラスをリードしてきた功績は偉大である。

尚、今回レビューするのはSS(ソリッドステート用、※2)の方。

100万円クラスとは、1m・XLR仕様の国内定価が100万円前後のケーブル群を指す造語。JORMA PRIME、STEALTH Indra、そして同TRANSPARENT REREFERNCE XLをはじめ、蒼々たる実力派がひしめき合う激戦区であるため、1つのジャンルとして区分している。尚、表にある基本性能総合からではなく、あくまでプライスを参考にした区分である点には注意が必要。

TRANSPARENTのケーブルには、ソリッドステート用のSSと真空管用のVが存在する。

[価格]

国内参考価格:1,060,000円(XLR 1m、税別。出典:Axiss)

[Specification]

非公開

[参考サイト]

http://www.axiss.co.jp/ftran.html

[外見・取り回し]

やや細身の線体と、その中央付近に備え付けられた重量級のネットワークが特徴的なラインケーブル。この構造はTRANSPARENTのラインケーブルに共通するものであるが、REFERENCE XLクラスになると、線体とネットワークを合わせるとそれなりの重量感がある。主観だが、ネットワーク自体は独特な外見ではあるものの、全体的には非常に機能的で無駄な脚色のないデザインで、原音忠実に定評のあるTRANSPARENTらしいデザインだと言えよう。

取り回しは、曲げについては苦労する可能性は皆無であるが、いかんせんネットワーク部が重いのと、ねじるのに案外苦労することから、プラグ部や機器側への過負荷については少々気を使う。バランスの場合、ネットワークがダブルであるため、尚更だ。

★音質レビュー

[概要・タイプ]

音場型・ニュートラル系のケーブル。導体自体はピュアコッパーであり、音色それ自体は暖色的な要素を含むが、その音像は冷静かつ整然と描写され、熱気やパッションといった要素は控えめ。つまり、潜在的なエネルギー感・パワー感は秘めるが、無闇にそれを顕在化させることはしない、大人しいタイプのケーブルである。その意味では、NBSのBLACK LABEL IIIやIIに通じるものがある。

さて、音場は特に左右・上下への広がりがある。前後については、STAGE IIIのGRYPHONやZenSatiのSeraphimなど、REFERENCE XLよりも広がるケーブルはあるだろう。より恐るべきは音場の透明感であり、無駄な粒子感が僅少である点も相まって、ステージの見晴らしはかなり良い。STAGE III GRYPHONなどと同様、情報量は増やせばよいわけではない、という点を強烈に意識させるケーブルである。音像は、単純な解像感や実体感についてはJORMA ORIGOなどに劣るだろうが、実際に聴いてみるとさほどの劣位は感じない。情報量を増やすのではなく、うまく描写することによって聴者を納得させるタイプ。

音色面についてもう少し補足すると、同様にピュアコッパーのJORMA ORIGOと比べると、ややシックかつダークな音調が特徴的である。誤解を恐れずに言うなれば、JORMA PRIMEやZenSati Seraphimなどに比べて鮮烈さと色彩感に乏しい印象を受ける。これが旗艦のOPUSになると、必要に応じてパッションと躍動感が強まり、ほぼ全ジャンルに対応可能な汎用性を得ることから、それこそがTRANSPARENTの理想とするところなのであろう。ただ、100万円クラスのREFERENCE XLにあっては、それらの点は犠牲にされているようだ。

 

[基本性能]

基本性能総合:スーパーハイエンド

解像感:4.5

情報量:4.5

S/N感:MAX

情報コントロール力:MAX

周波数レンジ感:4.5

帯域バランス:4

汎用性:5

音の分離感:MAX

(評価:MAX>5>4.5>4>…>1)

上述したように非常に息の長いシリーズであり、スーパーハイエンドケーブルのパイオニア的存在と言っても過言ではないケーブルである。サウンドは、そのことを裏付けるかのように脚色が少なく汎用性に優れたものであり、かつスーパーハイエンドの必須要素であるS/N感と情報コントロール力(ここでは敢えて音の分離感も含む)に関して極めて優れている。逆に、昨今のケーブルが好んで誇示したがる情報量(解像感含む)については、そこまで力を入れていない。また、これは上位機種との差別化を図るためであろうか、周波数レンジの広がりと帯域バランスについては「フラッグシップではないこと」特有の詰めの甘さを感じる(※)。上は綺麗に抜けてゆくのだが、下の落ち方が若干甘く、スピード感・リズム感もやや鈍い。高域のキレ味は十分なだけに、勿体ないところである。逆に、厚みは十分にあり、中低域〜低域付近が膨らむピラミッド型の帯域バランスだと言えるだろう。この点は、本来であればスーパーハイエンドにあるまじき欠点(評価で言えば4程度)なのだが、REFERENCE XLが一筋縄ではゆかない点は、この帯域バランスがクラシック音楽(特に、古いオーケストラ音源)の再生において抜群の威力を発揮する点である。上で述べたような長所もあいまって、楽器数が増えれば増えるほど安定感と統率力を発揮し、フルオーケストラの再生においては同価格帯でも最高クラスのパフォーマンスを発揮する。総じて、S/N感と情報コントロール力に優れる点、音色面での脚色が少ない点、クラシック音楽との相性が抜群である点、等々、短期的な流行り廃りに左右されない実力と方向性を備えたケーブルであり、おそらく10年後・20年後にもその地位は確かなものだろう。

※OPUSとの比較から。尚、SiltechのSnow Lakeなどについても、この点は感じる。

[主な特徴]

1.同価格帯でも最高クラスのS/N感と情報コントロール力

この点については、既に詳しく述べたので、ここでは割愛する。

2.クラシック音楽との相性

上で、REFERENCE XLの帯域バランスについて触れたが、REFERENCE XLのレンジ感は、クラシックにおける必要十分とほぼ合致する。さほどワイドレンジでない点は、特に昨今のソースを再生する際には足かせとなるが、(少なくとも筆者の知る限りにおいて)クラシックの再生時にはさほど問題にならない範疇にある。また、帯域バランスから言えばブーミーとすら言いうる低域(超低域を含まない)も、クラシック再生時には抜群の安定感・重厚感をもたらしてくれる。総じて、性能面でネガティヴな要素として取り上げた要素も、クラシック再生時にはさほど問題にならない、というのが率直な感想である(無論、軽やかさとスピード感を好む方には、クラシック云々以前にケーブルのキャラクターからして合わないが)。

加えて、REFERENCE XLの高域は銅ケーブルのシャープさとTRANSPARENTのケーブルに共通する音像の透明度が共存しており、(誤解を覚悟で言うならば)音色的に極めてピュアである。無論、システム構成にもよる話だが、例えばAETやESOTERICのような国産、あるいはJORMA DESIGNのコッパーケーブルではエッジや粒子感が出過ぎる局面は少なくなく、反対に銀や白金属を導体とするケーブルでは、アコースティックの生々しさが犠牲になりがちである。また、同様にダークで落ち着いた音調のNBS BLACK LABEL IIIやIIでは、高域は硬くなり過ぎる。その点、REFERENCE XLはかなりの意味で過不足なく、クラシック音楽における高域再生が求める要素を満たしてくる。特に、弦楽器の張り・伸びとピアノ高音の透明度の高さは、特筆に値する(我々の運用する全てのシステムで、この傾向は確認された)。おそらく、単に音色の問題というだけでなく、圧倒的なS/N感の良さがバックボーンになっていると思われるが、これまた必要十分な音像の実体感がここに加わり、一音一音がクリスタルさながらである。

尚、同様に脚色の少なさで知られるZenSati Seraphimと比べると、ステージの広がりと音楽的な明るさ・ストレスの小ささはあちらが勝るが、音像描写の克明さと音の透明度ではREFERENCE XLが勝り、特にクラシック再生における音色的な汎用性ではREFERENCE XLに軍配が上がると考えている。反対に、ジャズ全般を再生する場合は、Seraphimを用いた方が空気感は出るだろう。

[TRANSPARENT OPUSとの差]

ここでは、TRANSPARENTの旗艦モデルにして世界の頂点に君臨するOPUSとの比較を行う。

第一に、性能面の比較は有意義ではない。はっきり言って全要素においてREFERENCE XLでは話にならず、完全に下位互換となっている。価格設定からして、約100万円/mと約250万円/mであるから、この差は意図的なものであろう。

問題は、音作りの方。一言で言うならば、REFERENCE XLの方が整然として大人しい音調である。はっきり言ってしまえば静的で薄いのだが、時と場合によってはこの薄さがシステムを救済することもある。OPUSの場合、確かにステージの広さもSTEALTH Sakra以上には出すのだが、いかんせん密度と色彩感の豊かさは広さ以上のものがあり、下手なシステムに入れるとステージが飽和する(これは、BMI OCEANIC STATEMENTなどについても言えることだが)。正直に言えばこのクラスは、ポン置きのシステムに繋ぐだけではかえって悪化するリスクの方が大きい。そういう意味では、現時点でステージがうまく広がらず、これを潰さない形でうまく整理し広げたい、という方には、OPUSよりもむしろREFERENCE XLの方がお勧めできる。

逆に、現在のシステムのポテンシャルに自信をお持ちで、これをより広大に、鮮やかに、そして濃密にしたいという方には、OPUSを勧めたい。間違いなく、現時点で最も完成されたケーブルの1つであり、我々が知る限りにおいては10年以上も他を寄せ付けることなく世界の頂点に君臨している、類稀なる存在である。

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[ポジショニング]

予め申し上げておくと、どのインコネをどこに入れるのがベストな選択肢であるかは、一般論以上に具体的なシステム構成からお考えになるべきで、こちらでの説明はあくまでついでのものであることをご理解願いたい。以下、本文。

筆者的には、同様に銅素材をメインに用いているJORMA DESIGNやZenSatiのケーブルと組み合わせ、状況に応じて前段・後段で使い分けるのが最もREFERENCE XLの良さを損なわない使い方ではないかと思う。はっきり言って、銀や白金属を導体に用いたケーブルと併用すると、アコースティックの生々しさや温度感が損なわれるため、お勧めできない。特に、銀ケーブルと組み合わせると、REFERENCE XL側の良さのみならず、銀ケーブルに共通する良さの1つである速度感が一気に損なわれてしまうため、相性はかなり悪いと感じる。

[主な比較対象]

JORMA ORIGO(ライバル)

NBS BLACK LABEL II(ライバル)

ZenSati Seraphim(格上のライバル)

STAGE III CONCEPTS A.S.P. REFERENCE GRYPHON(格上のライバル)

MIT ORACLE V2.1 PRO LINE(格下のライバル)

TRANSPARENT OPUS MM(上位機種)