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★概要

 TRANSPARENT OPUS MM SPEAKER CABLES(トランスペアレント・オーパス)は、米国のTRANSPARENTが販売するOPUSブランドの初代にあたるスピーカーケーブル。2015年に入って上位機種のMAGNUM OPUSが登場したが、依然としてOPUSもまた世界に冠たるケーブルである。

 サイズ、音質、値段のいずれに関しても「超弩級」というフレーズが似合うケーブルである。一度でも目にしたことがおありの方ならご存知かと思うが、尋常なサイズではない。カーボンだけに軽量かと思いきや、全くそんなことはなく、片CHだけでもFM ACOUSTICSのプリより重いくらいである。サイズも相当なものである(写真)が、そもそもこのSPを導入する方は、かなり大きな部屋でかなり大きなSPを鳴らす方であろうから、サイズ自体が問題になることはあるまい。取り回しもさほど悪くはないし、むしろ重さに負けて落とさないという方が重要だ。それより、元箱の巨大さが尋常ではない。箱が大きいから何だ?という声も聞こえてきそうなものだが、1オーナーとして申すなら、実に邪魔である。写真は、JORMA PRIME SPの元箱とサイズを比べたものであるが、あまりの違いに愕然とする方も多いのではなかろうか。当然、こんな箱を部屋の中に置いておくと景観を損ねるし、並の収納スペースに収まるサイズでもないので、シアターとは別に物置が必要になる。

尚、2.4mペアで約430万円という価格設定は、ODIN(NORDOST)を凌ぎ、長らくケーブルの世界では最高のものであった。最近では、MAGNUM OPUSの他、SILTECHやZenSatiなどからOPUSより高価なものが現れてきているが、それらはあくまでOPUSが作った流れに乗っているものたちではないかと思う。それほど、このケーブルの存在感は別格かつ絶大なものがあった。

最後に付け加えるなら、OPUS SPは筆者・ロメオのケーブル趣味の歴史で最も強力なケーブルである。ケーブルにご興味をお持ちの全ての方には、(購入とまでは言わないが)一度くらい目にされることをお勧めしたい。良くも悪くも、ケーブルにできること・できないことの上限が見える筈だ。筆者が前に聞いた話だと、国内にデモ機は無いらしいので、イベント等の機会は貴重やもしれない。

[価格]

現在は、後続モデルが4,950,000円/2.4mペア(税別)。詳細はこちら

[Specification]

N/A

[参考サイト]

詳細はこちら

[外見・取り回し]

 既に一部について言及したが、とにかく巨大で重厚。ケーブルというより機器として認識すべきスケールだと思われる。OPUSのインコネと異なり「絶対に宙に浮かせることはできない」ので、中古でご購入の際には十分な長さか否かの確認は必須(新品の場合はオーダーになるだろうから、心配は要るまい)。尚、線自体の取り回しはそれなりに良い。

デザインについては、一部のファンの間では「亀」の相性で親しまれているようだ。私も概ね賛同するが、一方では「随分と首・尻尾が長い亀であるなぁ。そんなことでいざという際に身を守れるのかね?」などとつまらない感想を抱いている次第。

冗談はさておき、兎にも角にもケーブルの常識に反したデザインとスケール感なので、ご購入を検討される方はぜひ実物をレンタル試聴をなさってみて下さい。いざ実物が届いてから「使えません」では済まない価格だと思いますゆえ。

★音質レビュー 

 SPケーブルについては、ACやXLRに比べてサンプル数が少ないので、スコアリングは行いません。代わりに、ケーブル間の比較を織り交ぜつつ、レビューします。

[単体レビュー]

 音場・音像そして寒・暖のいずれについてもニュートラルなケーブルである。基本的な印象は、OPUSのインコネに近い。が、効きっぷりのレベルはまるで違う。率直に言って、ケーブルではなく機器のカテゴリー内で語るべき存在である。個性がどうのとか帯域がどうのとか言う前に、圧倒的なS/Nと空間表現力によってシステム全体を掌握してしまう印象だ。私は通常、S/Nに関しては「聴感」あるいは「感」という表現を用い、巷で一般的な「比」なる表現は敢えて避けている。その理由は単純で、私自身が比を測定しているわけではないからだ。しかし、おそらくOPUSの場合、システムのS/N比を変えてしまうケーブルだと思っている。測定したことはないが、仮にやったとしても数値に表れると確信している。というより、聴感上のノイズ量がこれほど減るのに測定値が変わらないとしたら、オーディオのレビューにおいて「S/N比」という表現を用いるのは不適切であろう。

少々熱くなってしまったが、効きっぷりの次元が他のケーブル(Seraphim(ZenSati)、Mantikor(Stage iii Concepts)、Enigma Sig(Kharma)等)とはまるで違うことから、その点は予め明記した。では、本題。

様々な意味でニュートラルというか、ノイズを排除しこそすれどあまり積極的に足すことをしないケーブルという印象。ただ、強いて言えば明暗の次元でややダークなケーブルかもしれない。この辺りはOPUSのインコネとほぼ同様。

また、重心はそれなりに下がると感じる。もの凄い安定感であり、特に低音は深さ・厚み共に不満が出てこない。このケーブルで不満が出るとすれば、それは他の部分に問題がある、と感じさせるような力量である(実際、そうなのだろう)。もちろん筆者は、一度として不満・不足を感じたことはない。

その他の性能についても、不足を感じる部分はない。周波数レンジ、解像感、情報の量感、音の分離感、等々、力量に不安を感じたことは唯の一度たりとも無い。逆に、効きすぎるのではないか危機感を抱いたことはある。幸いにも、拙宅のスピーカーはB&W 800 Diamond→AVALON DIAMONDなので、ケーブルの側がでしゃばり過ぎてバランスが崩壊する、というケースは皆無であった。が、SPに対しアンプの駆動力が貧弱な場合、OPUS SPを突っ込むと更なるパフォーマンスの低下を招く恐れはあるだろう。他の方が揚げたレントゲン写真などを見るに、TRANSPARENT社はボックスの中に何らかの抵抗体を仕込んでいるようでもあるし、工学的な話は抜きにしても、OPUS SPを入れることでシステム全体が重くなる感はある。専門的な話ができなくて恐縮ではあるが、導入に際してはSPに対する十二分なドライブ力を下地とした方が無難ではないかと考える。

[比較レビュー]

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1.OPUS SP vs. Seraphim (ZenSati)

Seraphimは、ZenSatiのフラッグシップ。OPUS 2.5mの比較対象として使用したのは2.5mの個体。余談ながら、Seraphimの2.5mはOPUSを上回る価格であり、これまた非常識なケーブル価格帯と言える。放出する際のことを考えるとさすがに新品で買う気はおきず、どちらも海外の知り合いから中古を譲ってもらったのだが、それでも高価だった。

この2つのケーブルを比較することは、有意義であった。というのも、どちらも素晴らしいケーブルでありながら、そのアプローチは異なるからだ。端的に言えば、Seraphimがケーブルとしての常識の範囲内で素晴らしい仕事をするのに対し、OPUSは明らかに一般的なケーブルの枠組みを超えた仕事をする

Seraphimの音色ならびにサウンドステージの広がりは素晴らしい。XLRのレビューでもその素晴らしさには触れたが、SPにおいては更に顕著だ。圧倒的なステージの広がりっぷりと生命感溢れる音像表現は、多くのファンにとっては垂涎の的だろう。私の友人は、GOLDMUNDのTELOS 600に対してすら気難しいWILSONのSYSTEM 7が朗々と唄っていたことに驚いていたし、はじめてSeraphim SPを800Dに繋いだ時は私も驚きを隠せなかった。とにかく、ステージがグッと広がり、SPが溶けて消えたかのような鳴り方をする。SPケーブルについては筆者もさほど詳しくはないが、それでもSeraphim SPが世界屈指の音場派ケーブルだと気付くのに、さして時間はかからなかった。

一方、OPUSを繋いだ際の第一印象は、感動というより当惑だった。このケーブルのポテンシャルは筆者の予想を完全に超えており、期待の範疇を凌駕した。通常、ケーブルというのはコンポ間の潤滑油もしくはシステムの調整剤的な役割を担うものであるが、OPUSはむしろ機器に匹敵するような存在感を放つ。すなわち機器やSPに対し、対等な目線から「俺に合わせろ」というような振る舞いをするのだ(無論、それに見合った実力で)。具体的には、とにかくパワーアンプにドライブ力とスピード感を要求する。と同時に、S/Nとステージ展開の精度・スケールについては、単体のケーブルでは考えられないレベルの貢献をする。そんなわけで、ファーストインプレッションの時点で全てが噛み合うということはなく、正直PASSのXA160ではスピード面で力量不足の感があった。しかし、OPUSの力量に合わせたセッティングをしてゆくことで(それこそプリとパワーの相性を検討するような感覚でパワーとOPUSの相性を検討することで)、このケーブルの真価は徐々に顕になっていった。私の場合、CHAPTER 500Mを導入し、パワー・スピードの双方を強化した。

結果、OPUSに合わせてシステムをセッティングした際の音のクオリティは、Seraphimを入れた際の音質を大きく上回るものであった(費用的にはほぼ同額)。ZenSatiには失礼ながら、そもそものポテンシャルからしてOPUSの方が遥かに上であるため、これは当然の結果と言える。

この2つの選択は、結局のところオーナーのモチベーションによるだろう。Seraphimは、大抵のシステムにおいて期待通りの働きをしてくれる(詳しくは、Seraphimの単体レビューをご参照いただければと思う)。一方、OPUSは上述した通り、一筋縄ではゆかない。しかし、根気よく向き合った結果としてのシステムの飛躍という観点からするなら、SeraphimのポテンシャルではOPUSには敵わないだろう。

OPUS SPケーブルの特殊性がゆえに、うまくレビューできているかイマイチ自信がもてないが、参考までにお楽しみいただければ幸いである。

 

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2.OPUS SP vs. MANTIKOR (Stage iii Concepts)

MANTIKOR(マンティコア)はStage iii Conceptsのフラッグシップ。優れたS/N感、3次元空間、浮かび上がるような音像表現、等々、Stage iii Conceptsの良さを凝縮したようなケーブルで、ある意味でOPUSに近いキャラクターのケーブルと言えるやもしれない。

さすがに絶対的なクオリティとなるとMANTIKORではOPUSに及ばない。ベストな環境で比較をするなら、MANTIKORはOPUSの下位互換であると言わざるを得ないだろう。たとえば、OPUSとMANTIKORでサウンドステージを聴き比べると、OPUSのそれはMANTIKORの奥行きに加え、Seraphimに迫る上下・左右を備える。MANTIKORのローノイズも相当なものだが、OPUSは更に上をゆく。いわゆる音像の温度感や肉感についてもOPUSの方がリアルである。なまじ、どちらも基本性能の強化に徹する「縁の下の力持ち」的なケーブルであるだけに、倍の価格差が露になったと言えよう。MANTIKORも同価格帯では相当なレベルのケーブルではないかと思うが、さすがに2.4mで400万円を超えるOPUSが相手となると、いささか分が悪い。

一方で、単体でも扱いやすく、そこそこのパワーアンプと組み合わせても優れたパフォーマンスを発揮する点、更には、それ自体で必要十分なスピード感が備わっている点は、MANTIKORの優れた部分といえる。OPUSは、OPUSの存在も含めてきちんと設計したシステムにおいては無敵とも言うべき能力を発揮するが、いかんせんパワーアンプに対して容赦なく力量を要求することから、システムによってはオーバースペックになりかねないと言えよう。

 

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3.OPUS vs. JORMA PRIME Bi-Wire (JORMA DESIGN)

JORMA PRIMEスピーカーケーブルはJORMA DESIGNの元フラッグシップ。現在は、SPケーブル限定でJORMA STATEMENTというブランドが登場しており、PRIMEはフラッグシップから外れている。が、インコネや電源ケーブルについてはSTATEMENTブランドは存在せず、依然としてPRIMEが旗艦であることから、やはりPRIMEは一級ブランドであると認識している。そんなPRIMEとトラペOPUSを比較する。尚、PRIMEはBi-Wireにつき、比較時はOPUSにZenSati Seraphimのジャンパーを当てた。

結論から言えば、MANTIKORのケースと同様に、PRIMEはOPUSの下位互換的な存在として位置付けられる。最大の理由は、音色とステージ展開。

音色に関しては、JORMA PRIMEの場合、クァンタムピューリファイアーに固有な艶感が乗り、これはシステムが不完全な場合にはうまいこと音をまとめてくるのだが(NBS BLなどと同様に)、ある一定以上のレベルのシステムに投入した際は、ピュアな音色を追求する上でのボトルネックとなり得る。価格が価格だけに、ハイエンドなシステムに入れると足を引っ張る個性というのは、致命的ともいえる。その点、OPUSの音色や響きはどこまで行ってもナチュラルなものであり、トップクラスのシステムに導入してみても何ら問題はないようだ。

また、ステージについてはJORMA PRIMEが3次元的な立体感を付与するのに対し、OPUSはPRIMEの深さに加えて左右と上下を強化したような音を出す。余談だが、JORMA PRIMEのサウンドステージは、MANRIKOR(Stage iii Concepts)のそれに近い。

逆に、このPRIMEの個性が好みだという方は、文句無しにPRIMEを導入すべきである。そもそもPRIMEとは、MANTIKORと同等の3次元的サウンドステージに加え、OPUSに迫る聴感S/Nを備え、更にはリッチで芳醇なテイストを備えるケーブルである。強すぎる艶感と今一歩のスピード感を除けば、これといって欠点は存在しないのである。特に、以下のような見方を正とするならば、PRIMEを導入するのは道理である。

そもそも、生音(ピュア)を至上とするならば、それぞれのシステムは、大なり小なりピュアから外れているという点を除けば、一律ではない。あるシステムには温度感が足りないし、あるシステムにはうるおいが足りない。あるシステムはノイズっぽすぎるし、あるシステムは重奏を再現するにはあまりに平面的だ。ゆえに、ケーブルのチョイスに正解という正解はない。ピュアに近付くために個々のシステムに足さなければならないものがあるだけであって、それはシステムによって異なる。結局、ケーブルの向き不向きを決めるのは現状からピュアの理想形へと伸びるベクトルの方向であり、言い換えるなら1つのケーブルの効能は、システム次第で吉にも凶にもなり得る。

こういった見方をするならば、艶感や温度感の乏しいシステムにJORMA PRIMEを導入し、状況の改善を図ることは誠に理に叶っていると言えよう。