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★概要

STEALTH Indra V.10(ステルス・インドラV.10)は、アメリカのSTEALTH audio cables社の製造するインターコネクトケーブルである。かつてはSTEALTH社のフラッグシップとして国内外を問わず名を馳せたモデルであるが、現在は(事実上)その座をSakraシリーズに譲っている。

日本国内では、Sakra登場後の現在も100万円クラス(※)の筆頭格として、NBS BLACK LABEL IIなどと共に極めて高い知名度を誇っており、Sakraと比べると流通量も圧倒的に多いと思われる(オフ会や中古市場などで目にする機会の多さなどからの推察)。また、音場型・寒色系の筆頭として、NORDOST VALHALLAと評価を二分してきた存在でもある。

尚、本レビューでは現行シリーズV.10(2013年現在)について主に取り扱う他、旧モデルであるRev.08とV.10との相違点についても説明する。

※100万円クラスとは、1m・XLR仕様の国内定価が100万円前後のケーブル群を指す造語。JORMA PRIME、STEALTH Indra、TRANSPARENT Reference XLなどをはじめ、蒼々たるケーブルがひしめき合う激戦区であるため、1つのジャンルとして区分している。尚、表にある基本性能総合からではなく、あくまでプライスを参考にした区分である点には注意が必要。

[価格]

国内参考価格:1,020,000円(XLR1m、税別。出典:ダイナミックオーディオ)

本国価格:9,300USD(XLR 1m。出典:STEALTH社公式HP)

[Specification]

・Amorphous conductive media (wire)・Ultra thin wire・Proprietary non-resonant cable geometry・Individually insulated strands

・Electrical resonance control

・Mechanical resonance control

・Characteristic impedance control

・Low energy storage dielectric

・Proprietary STEALTH connectors

・Advanced termination technique

[参考サイト]

http://www.stealthaudiocables.com/products/indra/indra.html

[外見・取り回し]

おそらくIndraは、世界のインターコネクトの中でも屈指の美しい外見を誇る。純白の被覆とプラグ部のカーボンは、多くのファンを魅了してきた。おそらく、日本でのIndra人気は単なる音質レベルの話ではなく、家具の中に設置した際のヴィジュアル的な美しさも含めての話なのではないかと思われる。絶賛。

STEALTH DREAM同様、太さに対する軽さ・取り回しの良さは非常に優秀。距離が無い場合は若干ねじりに苦労する可能性はあるが、どのケーブルについても言える程度の苦労だろう。取り回しから購入を躊躇う必要は感じない。しかしながら、線体が純白であるため、汚れに対しては常に気を使わされる。また、中古購入に際しては、汚れの有無・程度については売り手側に情報開示を要求した方がよいだろう。

★音質レビュー

[概要・タイプ]

音場型・寒色系のケーブル。最近まで、音場型の雄としてNORDOST VALHALLAと評価を二分してきた。ニュートラルなケーブルとして語られることもあるが、我々が聴き比べた限り、超の付くほどの音場型。音色についても銀導体の影響が色濃く、寒色系に分類すべきだと考えている。ただ、滑らかな美音を奏でるという評価については、賛同する。

音場は広さ・形状の双方に優れ、前後・上下・左右を問わず開放的に展開する印象。兄貴分のSakraと比べると、特に遠近感で顕著な違いが見受けられる。Sakraの方が音場・音像をハイバランスで両立しており、音線が明瞭で像の実体感も強いのに対し、Indra V.10の場合、ステージの遠近感があり、音像は軽やかに舞うような様相を呈す。各音は極めてリキッドで、ZenSati Seraphimなどと比べても粒子感に富む印象。きめ細やかな音粒子がダイヤモンドダストを彷彿させる。

同じように導体に銀・金を使用しているライバルとしてSILTECHの100万円クラスがあり、我々はSNOW LAKE G5 XLRを運用したが、SNOW LAKEの方が音場・音像についてハイバランス(Sakra的)であるのに対し、Indra V.10の場合は柔らかさ・軽やかさ重視の、典型的な音場型と感じた。尚、この質感は空気絶縁からきているというのが我々の見解(詳しくは別途、比較記事を執筆予定)。また、温度感についてはIndraの方がニュートラル寄りであるが、同時に”銀くささ”も強いと感じられた。おそらく、STEALTHよりもSILTECHの方が、銀を使いこなす技術に長けているのではないだろうか。

また、新たな音場型の雄として紹介したZenSati Seraphimと比べると、音場重視の音作りは共通するが、音色面で顕著な違いが見受けられる。Seraphimはコッパーベースの音色で、ヴォーカルや生楽器の温度感・生命感の再現に長けるのに対し、Indraのシルバーベースの音色は、シンセ等の響き・余韻を美しく魅せるのに効果的。ただ、はっきりと言ってしまえばSeraphimの方が遥かに使い道は多いだろう。

[基本性能]

基本性能総合:ハイエンド上級

解像感:5

情報量:5

S/N感:4.5

情報コントロール力:3

周波数レンジ感:4.5

帯域バランス:5

汎用性:3.5

音の分離感:3

(評価:MAX>5>4.5>4>…>1)

上述したように、国内では100万円クラスの筆頭格と言えるケーブルで、50万円クラスと比べると格段に優れた基本性能を誇る。特に、聴感上の情報量(解像感・音の数)と帯域バランスの良さについては同クラスでもかなりのレベル。情報量の豊かさについては有名だが、帯域バランスについては巷での噂以上の力量。音場型で帯域バランスに優れた音作りというのは、低音域のインパクトを出しにくい分だけ音像型のそれに比べて高難度かと思われるが、このIndra V.10は上から下まで、システムを問わずフラットに聴かせる印象だ。おそらく、低〜超低音域について、ある程度レンジや技巧を犠牲にして量感をもたせた点、でありながら最後までスピード感を犠牲にしなかった点が、システムを選ばないハイバランスを結果したのかもしれない。無論、TRANSPARENT OPUSJORMA PRIMEのような規格外には見劣りするが、同じ音場型のSeraphimVALHALLAと比べると、無難にまとめた印象だ。

一方で情報コントロールに関しては、(音場型の中でも)やや苦手とするように思う。同じ音場型のSeraphim XLRと比べても丁寧さを欠くきらいがあり、ともすれば音が氾濫するリスクもある弱音は事細かに拾い上げるが、強音とのメリハリはイマイチ(TRANSPARENT Reference XLSTAGE III CONCEPTS GRYPHONと比べると顕著)。音像定位の甘さも指摘できるだろうし(粒子感の強さもあり、音場型のSeraphimVALHALLAと比べても音の分離は悪いと感じる)、響きや余韻もSakraや他の100万円クラスと比べるといささか過剰。また、Reference XLJORMA PRIME、あるいはGRYPHONと比べると聴感S/Nで劣り、例えばGRYPHONにあるような超弱音を「抉り出す」かのような印象は受けない。悪く言うなら超弱音はマスクされ、聴感上の情報量とは別に、ダイナミックレンジ自体は狭いと感じられる。

総じて、性能よりも個性について印象深いケーブルで、巷の評判よりも汎用性はだいぶ低い、というのが我々の見解である。おそらく、多くのレビューにおいてはハイエンド入門クラス以下のインコネが比較対象になっており、相対的な低域の安定感や聴きやすい質感から高評価なのだと思うが、同格かそれ以上のケーブルと比べるとかなりポジションを限定されるケーブルだと感じられた。

[主な特徴]

1.業界屈指の美音

Indra V.10を語る上で避けて通れないのは、その美音であろう。

上ではダイヤモンドダストの例を挙げて説明したが、その喩えは質感と音色の双方をカバーしたものだと思っている。粒子感が豊かでサラリとした音像や、白系で明るい音色を基調としながら、時として暖かみや艶かさも醸し出す演出(日光を反射して輝くダイヤモンドダストを彷彿させる)など、多くの特徴を説明できる喩えとして、紹介した。

また、Indraの外見・取り回しも、その美音を想像する上で効果的だ。詳細は同じような話の繰り返しになるため省略するが、外見と音のイメージがこれほど重なってくるケーブルは珍しいのではなかろうか。

汎用性が高いか否かはさておき、聴いていて心地よいケーブルであることは確かだろう。人気があるのは頷けるし、メイン使用しないにしても1セットくらいは持っておいて損は無いケーブルだと言える。

2.豊かな情報量

Indraの情報量の豊かさは、その聴かせ方のうまさにあると感じる。巷で言われるほど周波数レンジを広げるとは感じないし、ダイナミックレンジもPRIMEGRYPHONほど強烈には広げないと感じる。つまり、単純な伝達能力については決して他を圧倒するものではない筈なのだが、実際に聴いてみるとその情報量には驚かされる。おそらく、聴覚に訴えるという意味での聴かせ方が巧いのだろう。いろいろな意味での器用さ(悪く言うなら誤摩化し)があるケーブル。

3.侮れないスピード感

Indra V.10は、VALHALLAGRYPHONなどと異なり、キレの良さやスピード感を前面に出すタイプだとは思わない。あくまで、さらりとした美的要素とふんわりした質感を活かす演出を優先しているのだろう。しかしながら、Indra V.10のスピード感は侮れない。これは、物理特性に優れる銀を導体に用いているというだけの話ではない筈だ。

オーディオ的な言い回しをするなら、低音のフットワークが非常に軽やかである。上で舞い踊るような音像と書いたが、出だしの軽さとなめらかさは音像の実体感が強いケーブルでは容易に真似できないレベルにある。上述のSNOW LAKEも同様に出だしが良いが、あちらは純粋にレスポンスの良さとキレで勝負しているのに対し、Indraの場合は舞い上がるような音作りがその原動力になっているように感じる。

[ポジショニング]

予め申し上げておくと、どのインコネをどこに入れるのがベストな選択肢であるかは、一般論以上に具体的なシステム構成からお考えになるべきで、こちらでの説明はあくまでついでのものであることをご理解願いたい。以下、本文。

Indraの場合、基本性能や汎用性はともかく、音楽性については明確な方向性があるケーブルであり、好みに合えば使い道も広い。個人的には、DAC・プリ間よりもプリ・パワー間に入れた方が、せっかくの個性が活きてくるため面白いと思っているが、実際のところは状況に応じて判断するべきだろう。

ちなみに、DAC・プリ間に入れるならば、予算が許すならばSTEALTH Sakraの方をお勧めしたいところだ。Sakraの方が高性能である分、上流における音の欠損が小さい。また、癖のようなものも小さいので、プリ・パワー間に入れるケーブルの選択肢が広がると思っている。別の言い方をすると、Indraは個性豊かな分だけ他のケーブルと喧嘩をするリスクも大きいだろう、ということ。

[V.10とRev.08の相違点]

Indra V.10と先代のRev.08の間には、いくつかの相違点が存在する。

第一に、立場が異なる。正確な記憶は無いが、次期フラッグシップのSakraがリリースされたのが2009年頃だったかと思うが、V.10がSakraの登場後にリリースされたケーブルであるのに対し、Rev.08はSakra以前、すなわちIndraブランドがまだSTEALTHのフラッグシップであった時代にリリースされたモデルなのである。

このことが影響したせいかは不明だが、V.10の方がより個性に磨きがかかっている、というのが我々の見解だ。Rev.08の場合、これはあくまでSTEALTHのフラッグシップとしての地位も兼ねたモデルだったためか、完成度は高いもののどこか綺麗にまとまってしまっている感が否めない。逆に、V.10の場合、陰影感や音像の実体感についてはいっそSakraに任せてしまい、その分ステージの開放感や粒子感について伸ばしてきていると感じた。

その他、性能的な話を付け加えるなら、聴感S/Nと情報量、そして音の分離についてV.10はRev.08を上回っていると感じる。聴感S/Nについてはカーボンプラグの改良(写真)が利いていると思われ、その恩恵として音の分離が改善されていると思われる。情報量については、解像感よりも音の数が増えているように思われる。

以上、我々の推察も踏まえてV.10とRev.08を比較した。

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(写真は、左がV.10、右がRev.08)

[主な比較対象]

STEALTH Sakra XLR(兄貴分)

ZenSati Seraphim(格上のライバル)

SILTECH SNOW LAKE(ライバル)

NORDOST VALHALLA(格下のライバル)

TRANSPARENT Reference XL

STAGE III CONCEPTS A.S.P. REFERENCE GRYPHON