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【リスニングの経緯】

 この度、知人よりG Ride AudioのWhite Devil 3sならびに2をお借りし、拙宅で数本のケーブルと比較試聴をさせていただいた。こちらのレビューは、White Devil 3s(ホワイトデビル)とMIT ORACLE AC1(オラクル)の比較になる。

 White Devil 3sは、G Ride Audioのフラッグシップモデルである。材料調達の関係で、限定販売のようだが、その実力は従来のフラッグシップであるWhite Devil 2よりも格段に上。対するORACLE AC1 は、MITの箱付き電源ケーブルの中でも、オラクルシリーズと呼ばれる高級ラインに含まれる。現在はディスコンであるものの、本シリーズの入門機として日本でも人気を博していた。

 なお、拙宅のアンプはSpectral社製で、同社はMITケーブルの併用を「強く推奨している」インターコネクトやSPケーブルについては有名な話だが、実は電源ケーブルについても推奨されている)。そんなわけで、出音の絶対的なクオリティをいうなら、MIT ORACLE AC1の方がよい。スペックが云々ではなく、相性が良く、しっくりくるのだ。

 しかしながら、本レビューはORACLE AC1を一方的に持ち上げるものではない。あくまで、指標ベースで2種類のケーブルを単純比較したものに過ぎないので、誤解のなきよう(White Devil 3sの方が全体的な評価は高いとすら言える)。

 

【外見的特徴】

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 White Devil 3sは、白くて細身の線体が特徴見た目を裏切ることなく、軽くて扱いやすい。オーディオも家具であると考えるなら、このシンプルかつスマートな外見は、部屋に対する圧迫感が少なく、筆者の好みである。

 ORACLE AC1も、線自体は軽くて扱いやすいが、箱の部分はそれなりに重く、接地させることが望ましい。IECインレットに過負荷をかけないという観点からすると、通常のケーブルよりやや長めの個体を選んだ方が良いかもしれない(2m~)。

 

【総論(音質評価サマリ)】

 総論は、指標ベースでの評価サマリとなる。やや堅苦しい書き方やもしれないが、ご容赦願いたい(後述の、音源ベースの各論の方がこなれた文章だと思う)。

 まず、スケール感のお話。音場はWhite Devil 3sの方が広く、奥行きも深い。ORACLE AC1は、音場を広げるタイプではなく、むしろ空間や音像の凝縮感で勝負するタイプである。

 次に、熱気(温度感)の話。どちらも温度感は高めのケーブルだが、ORACLE AC1の方がより熱い(筆者が知る限り、最もホットだ)。White Devil 3sの温度感はアレグロやShunyata ResearchのAnacondaなどに近い。

 スピード感(リズムの話。特に低音域)は、どちらもある。表現方法は異なるが、どちらももたつく印象は一切ない。White Devil 3sは細身で引き締まった音で、ORACLE AC1は低域をブーストする印象。

 続いて、周波数帯域のバランスと広がりについて。White Devil 3sはフラット。上述したように、ORACLE AC1と比べると、かなり低音域を締める。ORACLE AC1はややピラミッドバランス。低域自体のボリュームはさほど膨らまないが、非常に躍動的で存在感がある(ここまで低域が躍動するのはMITのケーブルくらいなものだろう)。

 最後に音離れとノイズ感について。やはり、音場が広い&音像が引き締まっていることから、White Devil 3sの方が音離れがよい。ORACLE AC1はむしろ、AVALONのスピーカーやSpectralのアンプなど、すでに音離れのよい製品と組み合わせて低域の躍動感を補うためのケーブル。

 

【各論(音源ベース評価)】

 各論は、音源ベース評価となる。2種類のケーブルを入れ替えながら、曲や楽器がどのように表現されるかをレビューする。

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 1曲目はクラシック。曲は、Tchaikovsky: Cossack Dance from Mazeppa。Reference Recordingsによるハイレゾ音源。低音の躍動感やスケールと中高音の軽やかさが同居する音源。録音はかなりよい。

 出音が軽やかなのはWhite Devil 3sの方だ。引き締まって歯切れの良い表現が魅力的。逆に、(特に低域の)躍動感は、ORACLE AC1の方が出している。グングンと踊るような低音域が印象的。オーケストラのスケール感は、White Devil 3sの方が出ている。前後・左右に大きく広がる音場と、大編成でも破綻しない音場表現と音離れの良さによるものだろう。

 ヴァイオリンは、White Devil 3sの方が細身でキレのある表現になる。一瞬一瞬がキリッと決まる音だ。ORACLE AC1の方が音の厚みはある。また、ORACLE AC1の方が、やや耳に鋭い感じがした。ヴァイオリンの温度感はいずれも十二分。寒々しくつまらない表現にはならないだろう。

 ティンパニの沈み込みはWhite Devil 3sが上。低域はかなり下までフラットに伸びる印象。音の立ち下がるが早く、連打であっても音が濁らない。逆に、ORACLE AC1の表現するティンパニは躍動的だ。立ち上がりの段階では、そこまで速い音ではないかも?と思わせつつ、持ち前の制動力でグイッとまとめてくる。ややキャラクターの異なる打楽器の表現だが、いずれも質の高い。

 管楽器については、Count Basie – April In Parisにて詳述する。

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 2曲目はロック。曲はEagles – Hotel California Live (Hell Freezes Over 1994)。アコースティックギターの多用を特徴とするライブ音源で、とても録音がよい。

 筆者がこの曲に対しても抱く印象は歪み、危うさ、退廃といったものだ(正しいかはさておき)。そういった印象に合った表現をするのはORACLE AC1の方である。White Devil 3sは、曲がったところのない素直で自然な音楽表現が魅力的なのに対し、ORACLE AC1はともすればギラりとした表現をしてくるが、そのテイストがHotel Californiaのギターの表現に合っている。

 ヴォーカルは、ORACLE AC1の方が存在感がある。ステージにかぶり付くような迫力でドン・ヘンリーのヴォーカルを堪能できる。拙宅の環境での評価だが、曲との相性が非常に良い。White Devil 3sはやや控えめだ。ドン・ヘンリーはone of themとして、少し後方で歌っている印象。

 ボンゴドラムは、White Devil 3sの方がリズミカルな表現になる。一音一音がビシッと決まる。逆に、(繰り返すようだが)ボンゴについてもORACLE AC1の方が厚みがあり、前に出てくる。グイッと鳴らす印象。

 次に、アコースティックギター。White Devil 3sで聴くアコギは、殊更に主張する様子はなく、広大なサウンドステージの中に一音一音を等身大で描写する。対するORACLE AC1のアコースティックギターの表現は、艶感と張りのある音像が特徴的だ。White Devil 3sと比べて音像は大ぶりで、時折、キラリと主張する。White Devil 3sと比べると脚色を孕む表現で、その歪みがこの曲「らしさ」と感じられる。音線の明瞭さはほぼ同等。音像が小ぶりなことを考えれば、White Devil 3sの方が精緻。

 最後に、ライヴ盤であるがゆえに入る、観客の発する微弱音について(拍手、声、擦れなど)。White Devil 3sの方が、ライヴ会場の広さが伝わる。具体的には、スピーカー後方のより広い左右・前後から、観客の拍手や歓声が聞こえてくるのだ。加えて、それら一音一音がより細やかに、濁らず表現されていることから、聴感解像度と音の分離においてWhite Devil 3sの方が優れると推察する。ORACLE AC1の魅力は、音像との距離が近いため、ライヴ会場の迫力を間近で感じられることだろう。また、会場の熱気という観点からしても、ORACLE AC1の方が強く感じさせる。White Devil 3sは若干、俯瞰的な趣である。

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 3曲目はジャズ。曲はCount Basie – April In Paris。筆者がこの曲に対して抱く印象は、前向きさ、明るさ、ノリのよさなどである。

 この曲を聴くにあたり、まずは音の明るさなる要素に意識を傾けたが、White Devil 3sの方がより朗らかで開放的な印象を抱かせた。ビッグバンドジャズだけに、サウンドステージの広さと音離れの良さも表現上、重要だが、これもWhite Devil 3sが良い。対して、躍動感(トランペットや、特にベースの)を重視される方にとっては、ORACLE AC1は理想的な選択肢の一つたり得る。ステージにかぶりつきでCount Basie Orchestraを楽しみたい方にとっても同様だ。

 では、個別の楽器について。まず、White Devil 3sの表現するトランペットは、歯切れがよく、軽やか。しかも滑らかな音であり、Basie is Backはトランペットがややアグレッシブな音源なのだが、エッジが立つ気配もない。一方、ORACLE AC1では、トランペットの厚みや躍動感が魅力的。奏者が踊ってるんじゃないかと感じることもある。

 次にシンバル。White Devil 3sで聴くシンバルの音は、粒が細かく、スッと広がっては散ってゆく。テイストは、ウォームでややウェット。(繰り返しになるが)刺々しさのない控えめな表現で、音場におけるone of themとして定位する。対するORACLE AC1においても、トランペットほどの主張はなされない。White Devil 3sに比べ、ややソリッドで粒感が粗めの表現ではあるが、こちらもウォームな音であり、クールで刺さるようなシンバルの聴かせ方はしない。

 最後に、ベース。White Devil 3sの再現するベースは、ORACLE AC1に比べて精緻である(音階の表現が正確、とでも言えるだろうか)。聴感解像度のみならず帯域バランスも抜群で、超低音域でも膨らんだり痩せたりしない。あまりブンブンいわず、どちらかといえば静的な表現。逆に、ORACLE AC1のベースは、躍動的でブンブンいわせる感じだ。スペック的な要素ではWhite Devil 3sに劣るだろうが、こちらの方が奏者の熱気や楽しげな雰囲気が伝わってくる。

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 4曲目もジャズ。曲は、Norah Jones – Don’t Know Why。ノラ・ジョーンズの歌声が素敵な女性ヴォーカルもの。筆者がこの曲に対して抱く印象は、後悔や切なさといった、女性的でウェットなテイストである。

 この観点からすると、White Devil 3sの方がより、この曲の特徴を引き出してくれる。他のケーブルとの比較レビューでも言及しているが、このケーブルの音は女性的で柔らかく、しかも熱っぽくてウェットだ。ORACLE AC1も熱っぽさは負けていないが、やはりMITのケーブルらしくゴリゴリと男らしい印象で、女性的な柔らかな表現を求めるのは難しい。

 なお、ノラ・ジョーンズにおいては、女性ヴォーカル全般の再現において求められるしなやかさや艶っぽさに加え、声の伸びやかさも求められるが、今回だと、より伸びやかなのはWhite Devil 3sの方。上も下もだが、スッと伸びる点はWhite Devil 3sの特徴。ちなみに、ヴォーカルの実在感はORACLE AC1の方がある。ノラが前に出てくるのと、音の厚みもORACLE AC1の方があるので、かぶりつきで歌声を聴きたい方はこちら。

 ピアノは、ORACLE AC1の方が濃密な音になる。ヴォーカル同様、奏者と聴者の距離が近い点もある。ただ、システムによってはかなり躍動的で元気なピアノになるだろう。White Devil 3sの方が、より幅広いシステム&曲で、違和感なくピアノを聴けるとは思う。

 

【あとがき】

 これはWhite Devil 3sとNBSのBLACK LABEL IIとの比較記事でも書いたのだが、この比較もまた、筆者の知る最も個性的なケーブルの1つと最も癖の少ないケーブルの1つの比較と言えた。

 MITのケーブル全般について言えることだと思うが、ORACLE AC1もまた、かなり特効薬的なケーブルだ音楽にエネルギー感と躍動感を与える効能を有しており、だからであろうか、海外のオーディオショウではSpectralやConstellation Audioのアンプと組み合わせられるのをしばしば目にする。また、AVALONのスピーカーの弱点を補うことでも有名で、Spectralではないアンプを使っているケースでも、AVALONとMITを組み合わせることは多いように思う。何にでも合うわけではないが、ハマれば強烈な威力を発揮するケーブルだ。

 対して、White Devil 3sというケーブルは、ORACLE AC1を含む、従来の暖色系ケーブルの数々の欠点を克服している。かつて、熱気や生っぽさのあるケーブルは、ShunyataのKing CobraやPADのDominusのように低域のスピードを犠牲にしたり、MIT ORACLEやNBS BLACK LABELのように強烈に癖のある低域表現をすることか、いずれかだったように思う(アレグロだけが例外的だった印象)。また、空間表現も苦手で、空間についてはNORDOSTやSTEALTHといった寒色系ケーブルの独壇場だったように思う。

 この傾向は、Jorma PrimeやZenSati Seraphimの登場によって変わってきた感じもしていたが、このWhite Devil 3sは、これらに比べて遥かに安価で癖も少なく、扱いやすいように思う。おそらく、暖色系と呼ばれるジャンルの新たなスタンダードになるケーブルだろう