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 7N-PC9500(概観)

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7N-PC9500(プラグ)

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 7N-PC9100(概観)

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7N-PC9100(プラグ)

★概要

MEXCEL電源ケーブルは、ESOTERICの販売するフラグシップ電源ケーブル。元々は8000番台だった当社のフラッグシップだが、9000番台になって以降はMEXCELとの呼称も冠するようになったらしい(「D.U.C.C. Stressfree 7NCu MEXCEL導体」なる導体を用いているとのこと)。尚、今回は現行フラッグシップである7N-PC9500をメインとしつつ、時折7N-PC9100についても言及しながらレビューしてゆく。

かねてよりMEXCEL電源ケーブルは、AETのフラッグシップであるEVIDENCEと並び、数ある国産の電源ケーブルの中でも最高峰の存在として語られてきた。ライバル的存在としては上述のEVIDENCEの他、マニアの間では絶大な支持を得ているアレグロ電源ケーブル、TRANSPARENTのフラッグシップであるPLMM2Xなどが挙がるだろう。筆者としては、9100・9300の段階ではEVIDENCEと良い勝負をしていた感もあったが、9500に至ってMEXCEL電源ケーブルの完成度は大いに高められ、AETを一歩引き離したと感じている。また、かつては後塵を拝していたアレグロやPLMM2Xと同じ土俵に上がったとも感じている。

9100、9300(試聴のみ)、9500という変遷を私なりに解説すると、9100→9300では性能以上に個性の変化が大きいと思っている。この辺りは上奉書屋さまのページに詳しく、氏の言葉を拝借するならば「大人っぽい音」になった。私なりの見解を加えるなら、9100にあった真っ直ぐで裏表のない元気のよさをベースとしつつ、奥深さや陰影も同時に感じさせる仕様になったと感じた。

逆に、9300→9500では性格よりも性能について、大きな変化があったように思う。9300以前のMEXCELは、アレグロと聴き比べると貧弱な部分が目立っていた。対応できるジャンルの幅もそうであるし、(特にパワーアンプ駆動時の)低音域の深さや解像感にも不安があった。しかし9500に至り、ベースとなる鮮烈で勢いのある個性はそのままに、上述した弱点のかなりの部分が克服されたと感じている。依然としてパワーアンプならばアレグロかと思わんでもないが、少なくともトラポに入れるなら9500だろうと思わせる情報の量感と低域の深さが備わっている。主観ながら、9300では曖昧だった部分が明らかなクリアネスをもって再現されていることから、性能的には世界に通用するレベルに至っているのではないかと思う。

今後、MEXCEL電源ケーブルが世界で通用するか否か、グローバルなトレンドとどう向き合ってゆくかにかかっていると思われる。詳細は後述するが、私も1人の日本人として、ESOTERICがMEXCELを世界で通用するようなブランドに育ててゆくことを願ってやまない。

[価格]

国内参考価格:360,000(1.5m、税別。出典:ESOTERIC HP)

 [Specification]

外形寸法: 16.0mm
中心導体: D.U.C.C. Stressfree 7NCu MEXCEL×2
(0.32φ×50本 黒/白 各1本)
スーパーアニール 4.5NCu×1
(0.32φ×50本 緑 1本)
内シース: 高分子ポリオレフィン(カーボン含有)
+タングステン粉体+アモルファス粉体
外シース: 耐UVポリウレタン
絶縁体: 高分子ポリオレフィン系樹脂
シールド: UEW編組+半導電テープ
導体抵抗: 2.0mΩ/m
電流容量: 50A/VCTF規格
静電容量: 10pF/m
パワープラグ: 特殊ベリリウム銅ダブルバフ(鏡面)加工
(銀メッキ+ロジウムメッキ)
IECコネクター: 特殊ベリリウム銅ダブルバフ(鏡面)加工
(銀メッキ+ロジウムメッキ)

[外見・取り回し]

両サイドのカーボンプラグが特徴的な外見。特に7N-PC9500のプラグは、世界的にみても相当にしっかりとした部類のプラグであり(画像)、作りのよさが伺える。シールドは、ESOTERIC・ACROLINK仕様ともいうべきもので、メッシュの上にゴムチューブのような素材を被せたもの。余談だが、日本の展示会などでこのデザインを見かけると、「ケーブルにまでこだわっている、なかなかにハイレベルなシステムなんだな」と分かる。

 

★音質レビュー

現時点では、MEXCELは国内の電源環境を意識したモデルであり、海外の電源ケーブルとダイレクトに比較してスコアを付けるのは気が進まないので、今回は国内にもディーラーを有するTRANSPARENT PLMM2X、アレグロ、そしてNORDOST ODIN ACを主な比較対象とし、レビューしたい。尚、比較に用いたのは7N-PC9500。

IMG_49371.7N-PC9500 vs. アレグロ

どちらも、日本人のデザイナーによって設計・開発された電源ケーブルであり、日本の電源環境における最高峰として認識されているケーブルたちと言える。価格も30万円台後半であり、音像表現を得意とすることから、独特のライバル関係にある。筆者の中では、上述のPLMM2Xも含めて3強として認識している(NORDOST ODINは別格であろうが)。

同じ銅線でありながら、両者のキャラクターはだいぶ異なっている。9500は鮮度感を、アレグロは温度感を前面に出してくる印象だ。別の言い方をするなら、9500の方が瑞々しく鮮烈、アレグロの方が濃厚で芳醇と言えるやも知れない。少し大げさなたとえやもしれないが、セリーヌ・ディオンが30を迎える直前の名曲「My Heart Will Go On」を聴き比べてみると、9500では25歳ほどに、またアレグロでは35歳ほどに感じられる印象だ。聴感上の周波数レンジと帯域間のバランスについては、両者互角の印象。9100や9300の段階ではMEXCELが後塵を拝していた印象だが、9500に至って相当に強化された印象。したたかになった、と言ってもよいだろう。情報の量感は、9500が上。まさに蛇口を全開にしているような音の出し方。逆に、音の分離感や定位感など、情報のコントロールという観点からするならば、アレグロの方がしたたかだといえる。

総じて、9500は主に情報の量感について劇的な改善をもたらす一方、ポジショニングを誤ると音が鮮烈になり過ぎ、コントロールも効きにくくなるリスクもある。そんなわけで、私はMEXCELについては一貫してトランスポートへの使用を勧めている(下に入れるより、個性を抑えつつ上手く性能を引き出せるため)。対して、アレグロについてはどこに入れてもバランスを保つが、強いて言えばパワーアンプへの使用を推奨したい。アレグロでパワーアンプを駆動した際の音の安定感・信頼感は際立っている。特に、大口径ウーファー駆動時の音のなめらかさは絶品。

2.7N-PC9500 vs. TRANSPARENT PLMM2X

(写真を撮り忘れていたので、暇を見て撮影・アップします。)

日本の雄・ESOTERICのフラッグシップと世界の雄・TRANSPARENTのフラッグシップの比較。これまた、全く異なる個性をもった2つのケーブルだと言えるだろう。もっと言えば、対極的な印象の2本といってもよい。

一言で述べれば、9500はどこまでも開放的で、PLMM2Xはどこまでも行き届いている。上で、アレグロの情報コントロール力を賞賛したが、PLMM2Xにおいてはこの点が更に徹底されている。冷徹と言ってもよいだろう。特に、PLMM2Xのノイズ対策はすばらしい。電源ケーブル界全体を見渡しても確実に3本の指に入る聴感S/Nの良さを誇り、音像の分離・定位も大きく改善される印象だ。サウンドステージの広さもあいまって、ステージの描き分けという観点からすればケーブル界でも屈指の実力を発揮する

しかしながら、この徹底した情報コントロール力は、時として音楽の勢いや鮮度感を奪ってしまう。有り体にいえば「本来の音と比べて大人しくなりすぎるんじゃないの?」といった感想を抱かせる(このあたりは同社のOPUSブランドからは感じないものであり、PLMM2Xといえども価格相応な面もあるのだなぁと思わされる部分でもある)。そんな時は、7N-PC9500を導入すれば問題は一瞬で解決だ。一聴して、蛇口を全開にしたかのような勢いが感じられることだろう。尚、これは音の温度感の問題とは異なるので、その点は注意していただきたい。実際、PLMM2Xと9500で音の温度感は大差ないし、ホットなサウンドを目指すならアレグロの方が適任である。

性能的な話を補足すると、9500は周波数レンジの広がりや帯域バランス(フラットか否か)について勝る印象で、PLMM2XはS/N感と音のコントロール全般で勝る印象だ。総合的な格について語るならPLMM2Xが上だと思うが、音楽を楽しく聴くという観点からするならば9500の方が使いやすい。「粗削りな面もあるが、元気で素直な若者」といったサウンドで、個人的には好印象だ。

チョイスは比較的簡単で、システムに鮮度や勢いを付加したい場合は9500を、一音一音の分離感・定位感を改善し、音の完成度を高めたい場合はPLMM2Xをそれぞれ選ぶとよいだろう。得意ジャンルは、9500はヴォーカル全般(特にデジタル以後の音源)、PLMM2Xはクラシック、ジャズ、古い音源。

IMG_49373.7N-PC9500 vs. NORDOST ODIN AC

TRANSPARENTと双璧をなすもうひとつの雄・NORDOSTのフラッグシップと、7N-PC9500の比較。前提として、性能・価格共にあまりに違うので、フェアな比較と言い難いことは認める。1.25mで160万円もするODINと比較すれば大抵のケーブルは辛口評価になるし、ODINに劣っているからといって、7N-PC9500の出来が悪いというわけでは全くないことは予め明記しておく。また、全ての意見は当然ながら筆者の主観であるから、その点はご了承いただきたい。

現時点で最も完成された電源ケーブルの1つであるODINと比較することで、7N-PC9500に足りない部分がみえてくる。それはスピード音場展開力だ。ODINの方が圧倒的に速いし、広い。特にサウンドステージの広がりについては、ESOTERICが捉えるべき世界のトレンドでもあると言えよう。NORDOSTのみならず、TRAPSNARENT、MIT、ZenSati、Stage iii Conceptsといった世界のトップブランド(それも勢いのあるブランド)は何れも、サウンドステージを押し広げることでシステムにスケール感を付与している。一聴しての広がりをさほど強くは感じさせないJorma DesignやCrystal Cableのケーブルも、よく聴くと前後感は相当に出しており、容積的には相当なものだ。しかもこれらのブランドでは、下位ラインにおいてもサウンドステージの広がりが優先されている。それこそ、音の厚みや低音の強さは二の次にしてでも、ステージの広がりを追っている印象だ。私なりの推察をすると、たとえばこの20年ほどでAVALONやWILSONあたりからYGやMAGICO等へと至った「強大なドライブ力と優れたS/Nを備えた石アンプの存在を前提に、スケール感と精緻さを高次元で両立するサウンドステージの追求」というトレンドが世界的にメジャーになってきていることも、無関係ではないだろう。これらのSPは、ことステージ展開に関しては追い込めば追い込むほど音が良くなる印象を受けるので(いちおうロメオはAVALON DIAMONDオーナーであり、かつてはB&W 800DやWILSON SOPHIAも所有していた)、ケーブルもそちらを強化する方向にトレンドが移りつつあるのではないかと思っている(事実、Nordost OdinやZenSati Seraphimは、低音やS/Nが貧弱なシステムに入れたとしてもその部分はあまり補強してくれない)。逆に、こういったトレンドに乗り遅れたNBSやShunyata Researchは、もはや全盛期の面影を残してはいない。話がだいぶ逸れてしまったが、MEXCEL電源ケーブルが世界的に飛躍するにあたって次に求められるのは、今ある音像の存在感を保ちつつ、サウンドステージをも押し広げてゆくことだと筆者は考えている。

逆に、情報の量感や音の迫力では良い勝負をしている。MEXCELのお家芸たる「洪水の如き情報量」は9500においても健在だ。ひとつひとつの細部をみてゆけばさすがにODINの表現力が勝るかもしれないが、一聴しての情報量では9500も負けてはいない。但し、ODINの方が個々の情報をコントロールする力が強いことと、ステージの奥行きと迫力を両立できていることから、音のクオリティ感では上をゆく。

情報のコントロールについては、優れた音の分離感・定位感に加え、ODINは上から下まで超ハイスピードで、特定の帯域がもたつくというケースがほぼ皆無である(ゆえに、スピード・リズム的な意味でのサウンドの一体感は素晴らしい)。あくまでODINとの比較においてだが、9500は特定の帯域をもたつかせる場合が多い(特に低音域)。日本国内は銅線メインの環境であるから、このあたりのもたつきは目立っていないが、世界に出れば必然的に他社の銀線や銀銅線と競合することになるので、スピード感の問題が浮き彫りになる可能性は高い(同様の例だが、国内で高い評価を得ているJORMA PRIMEは、国際的には苦戦している)。MEXCELが本格的に世界進出を果たすにあたっては、銀を用いたアプローチによってスピード感を高めることは有意義と言えよう。

4.総括

上述したように、MEXCEL電源ケーブルは7N-PC9500に至り、その完成度をさらに高めた。このペースでゆけば、7N-PC9800あたりが出る頃には国内では敵なしという状況になる気がしている。そして、それだけのポテンシャルがあるのだから、本格的に世界を目指してみてはどうかとも思う。

もちろん、世界で良いポジションを取ろうとした場合、越えなければならない壁は高い。上述したサウンドステージやスピード等の問題に限らず、純粋なクオリティについても更なる飛躍が求められる。Nordost OdinやStage iii Leviathan(あるいはOPUSのインコネやSPケー)などが良い例だが、世界のトップブランドは100万円オーバー/mという価格設定に見合ったパフォーマンスをたたき出すことに血道を上げている。そして、その過程で培われた技術やノウハウを下位ラインに搭載し、30-50万円/本といった価格帯をも席巻しようと息巻いでいる(Valhalla 2などが良い例)。その何れも、簡単な相手ではない。

しかしながら、仮にESOTERICがMEXCELでこういった強豪と肩を並べることができれば、日本のケーブル趣味は大いに盛り上がるのではないかと筆者は思っている。実際、ESOTERICのデジタル機器は素晴らしいし、メカや内部配線においては国内外で高い評価を得ているという噂も耳にするので(真偽については保証しない)、ぜひケーブルに関しても頑張ってもらいたいところである。国内屈指のメーカーの、更なる躍進に期待したい。