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★概要

Absolute Dream Power Cableは、オランダのCrystal Cableブランドが製造している電源ケーブルであり、同社のフラッグシップモデルである。導体には、Siltech譲りの”Mono Crystal Silver”を用いており、シルバー・ゴールド導体を用いているDiamondシリーズ以下のラインとは異なるとのこと。このあたりは筆者も十全の情報を得ているわけではないので、詳細が分かり次第、加筆したい。
実のところ、本ラインは日本国内では紹介されていないが、今回はオーディオ目玉親父のmessa様のご厚意により、1ヶ月ほどかけてじっくりと試聴する機会をいただいた。したがって、オーナーとしてではなく、あくまで試聴の範囲内でのレビューであることを、予めお断りしておく。messa様、この度はありがとうございました。余談ながら、オーディオ目玉親父さんでも、本レビューを同時掲載していただいたので、この場を借りて紹介すると共に、感謝の念を示したい。

[価格]
参考価格:10,000USD(1.5m)±2,500USD(0.5m)

[Specification]
非公開

[参考サイト]
Crystal Cable製品ページ

[外見・取り回し]

プラグが同一であることも含め、NORDOST ODINと極めてよく似た外見のケーブルとなっている(写真)。胴体はAbsolute Dreamの方が若干細く、引き締まっていている。また、Absolute Dreamはシールドにゴールドメッキを施しているとのことで、外観はODINよりも黄色寄り。

★ファーストインプレッション

[概要・タイプ]

一聴して、超高性能。音像表現のレベルの高さは世界的にも稀有な水準。非常に明るくクリアーな音色が印象的で、全帯域に渡って音像に実体感があり、一音一音のアタック感を楽しめる。音の温度感はさほど高くないが、非常に明るくヴィヴィッドな音色であるため、無機質な印象は受けない。
特筆すべきは、低音域のクオリティ。スピード感・深さ・解像感のいずれについても世界最高水準で、筆者が知る電源ケーブルの中では、最も克明かつキレのある低音域を誇る。
こう書くと、アレグロやNBS BLACK LABELのようないわゆる低音重視のケーブルに近いかと思われるやも知れないが、実際には毛色が異なる。アレグロやBLACK LABELがその重低音を牽引力として音を組み立てるのに対し、Absolute Dreamの帯域バランスはあくまでフラットである。第一に、中〜高音域の力量がまるで違う。解像感、音線の明瞭さ、キレ等、考えうるバロメーターのほぼ全てについてAbsolute Dreamが圧倒的で、その強力な低音域と互角に張り合えるだけの質と量を備えている。そのため、結果として低音域を際立たせた音作りにはなっていない。その意味では、JORMA PRIMEを明瞭・ハイスピードにしたようなケーブルと言えるかもしれない。
このAbsolute Dreamのしたたかな点は、上述のような高いポテンシャルを誇りながらも、音像一辺倒の音作りをしていない点であろう。具体的には、サウンドステージの前後感が豊かである。
これはODINやFLOW MASTER REFERENCEなど、同クラスの銀線との比較から感じた結論だ。同じ銀線でも、FMRは左右の広がりに長ける。奥行きも無いわけではないが、Absolute Dreamの方がより3次元的なステージ展開をする。いずれも音像の実体感は十分なものだが、FMRが(相対的な)ステージの張り出しと音像の厚みによって存在感を出しているのに対し、Absolute Dreamは音線の克明さによって実体感を保っている。このあたりは、STAGE III CONCEPTSのKRAKENに近い表現方法と言えよう。尚、NORDOST ODINとの比較については後述する。
このように性能の高さは無論、表現方法についても優れた部分の多いケーブルだが、万人受けするかと問われれば、それは違う。あらゆるケーブルについて言えることではあるが、好みの問題は付き纏う。その明瞭さは、時としてシステムから陰影感を削り取るし、ストイックな性格は音源の欠点をも暴き倒す。ハイエンドの王道を行くようなケーブルであるからこそカバーし切れない領域も存在することは、オーディオの深みでもあり、醍醐味とも言えよう。
加えて、ここまでくると値段の問題も重要だ。10,000USDあれば下手な機器が買えてしまうし、ルーム自体を改修できてしまう。取りうる選択肢がケーブルの買い替えに限られない以上、「ケーブルの選定」という枠を超えた熟慮が求められるだろう。

[基本性能]

ファーストインプレッションにつき、十分な確証は得られていないため、割愛。が、一聴して際立った基本性能を備えていることだけは確か。基本性能もさることながら、これほど「一聴しての性能の高さ」を実感させてくれるケーブルは珍しい。

[ポジショニング]

オールラウンダーといって差し支えないだろう。前段に配置して優れた周波数特性と帯域バランスを活かす使い方と、パワーアンプに使用して低音域のアタック感を高める使い方がある。

[NORDOST ODINとの比較]

外見や価格から考えても、Absolute DreamとODINはライバル関係にあると言って差し支えないだろう(Crystal側がどこまでODINを意識していたのかは不明)。力量的にもほぼ互角であり、選択は純粋に好みの問題と言えそうだ。
端的に言って、音場重視の方にはODINを、音像重視の方にはAbsolute Dreamを勧める。具体的には、音像の実体感、ローエンドの伸び・解像感についてはAbsolute Dreamが、サウンドステージの広がり、空気感、情報の量感についてはODINが、それぞれ勝る。重心はAbsolute Dreamの方がやや低い。スピード感はどちらも最高峰だが、ODINの方が軽やか。音色は、Absolute Dreamの方が明るく、温度感はODINの方が高いが、全体としてはODINの方が癖は小さいように感じる。Absolute Dreamの明瞭さは一種の個性。

[主な比較対象]
ODIN (NORDOST)
Flow Master Reference (Argento Audio)
Cherub (ZenSati)
PRIME POWER (JORMA DESIGN)
BLACK LABEL III (NBS)