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★概要

A.S.P. REFERENCE KRAKEN(リファレンス・クラーケン。以下、KRAKEN)は、アメリカ合衆国のSTAGE III CONCEPTSが製造している電源ケーブルであり、2013年現在、当社のフラッグシップモデルである。

線材・シールド・プラグ・他、KRAKENを構成する各部品の設計・製造における同社のこだわりは類を見ず、特にこのKRAKENにあっては、内部の設計やプラグのサイズ・重量も下位モデルとは完全に異なっているなど(詳細は公式HP参照)、ほぼ完全な専用設計となっている。

非常に高額な開発費がかかっているためか、定価はJORMA PRIMEのほぼ倍額にして、Siltech Ruby Double CrownやZenSati Cherub等と肩を並べ、世界で最も高額な部類に含まれる。また、実売価格もディスカウントレートは公式にMAX24%であり、3〜4割のディスカウントも珍しくない海外メーカーの中にあっては、新品での入手に苦労するケーブルである。

[価格]

MSRP:11,200USD(2.0m)

Over 6,000USD = 24% discount

[Specification]

A.S.P. REFERENCE KRAKEN power cables employ 6 large-gauge Cryo-treated, custom slow-extruded silver/palladium AeroStrand Ultra™ ribbon conductors. Air dielectric with FEP Teflon air-tubes.

H.D.A. 100% radiation invulnerable shield. Each conductor + 3 plated silver ground wires individually shielded with silver plated braid. Multi-layer construction with silica/ceramic/ferrite mechanical damping/shielding layer.

Custom handmade polymer-filled, carbon fiber plug housings help eliminate external vibrations. Exclusive Hyperion Ceramic plugs with Silver/Copper alloy electrical contacts, Palladium plated and Cryo-treated (custom made by Stage III Concepts).

[参考サイト]

STAGE III CONCEPTS ホームページ

[外見・取り回し]

アレグロやBLACK LABEL IIを上回る巨体、漆黒の外観、他社のケーブルと比べても一回り以上巨大な専用プラグ、そして制震目的に要所で用いられるカーボン製のシールド、等々。どこからどう見ても並のケーブルではない。重量にしても2.0mで2.5kgを上回る(大部分はシールド)など、S/N向上に対する過剰なまでのプライドが見出せる。

そんなわけで、音の方は非常識なまでに優れたケーブルだが、取り回しには相当に苦労する。強靭なシールドのせいで捻りにくく、加えて非常に重いため、軽めの機器に繋ぐ際には配置などを工夫する必要がある。

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アレグロ電源ケーブル(内側)が小柄に見える。

★音質レビュー

[概要・タイプ]

詳しくは後述するが、群雄割拠と考えていた電源ケーブル界において、明確に他を凌駕して頂点に君臨する存在として、我々にかつてない衝撃を与えた電源ケーブルである。電源ケーブル界におけるTRANSPARENT OPUSのような存在。

ニュートラル型・微寒色系のケーブル。これまで最高峰だと思われていたBMI OCEANIC STATEMENTを遥かに凌駕する次元で音像表現と音場表現を両立したケーブルであり、これをもって音像型あるいは音場型云々と議論するのは野暮だろう。我々が言うところの「型」、すなわち音像表現・音場表現について、仮にKRAKENに不満が残るようならば、それは音色的な好みが合致しないか、もっと言うならシステムの他の部分が煮詰まっていないのだろう。OCEANIC STATEMENT並の奥行き、ZenSati Cherub並の左右・上下の広がり、そしてPLMM2X並のS/N感と音像定位感を同時に実現するKRAKENを「型」の分野で上回るケーブルは、我々の知る限り存在しない。このクラスで運用していないものといえばZenSati Seraphim AC、Siltech RDC、そしてNORDOST ODINくらいだが、それら全てを所有する方に言わせると、この観点からKRAKENに勝るものはないとのこと。主観という但し書きは付すものの、本稿執筆時点では世界一の存在として紹介したい。

音色は、微寒色。温度感はBMI OCEANIC STATEMENTに近い。白金属に共通する艶っぽさが全帯域を支配している分、OCEANICの方がやや華やかで色っぽい印象を受ける。KRAKENの高域は銀成分が強いため、むしろ精緻で高分解的。また、明暗の次元ではKRAKENはニュートラルで、もっと言えば高域は明るめ、低域はダーク。高音は、異能のS/N感を背景に、SILTECHやArgentoなどにあるような高品位銀線のそれを、より克明で立体的に描く印象。低音は、白金属パラジウムの厚みとエネルギー感をベースに、銀素材の良さを出しつつ周波数レンジと解像感を高めている印象。中音はこれらの中間的で、厚みと精度のバランスが良い。同社のGRYPHONではやや存在感の希薄さが気になった中域だが、KRAKENにあっては厚みと実体感が十分で、透明感豊かな美音的性格を帯びる。

[基本性能]

基本性能総合:No.1

解像感:MAX

情報量:MAX

S/N感:MAX

情報コントロール力:No.1

レンジ感:MAX

帯域バランス:MAX

汎用性:No.1

音の分離感:No.1

(評価:No.1>MAX>5>4.5>4>…>1)

一言で表すならば、KRAKENの性能は「要素毎に得手不得手のあるスーパーハイエンドの中にあって、ほぼ全ての要素について各要素のスペシャリストと互角に勝負できる」と思われる。例えば、帯域バランスや周波数レンジ感についてはJORMA PRIMEと、S/N感についてはTRANSPARENT PLMM2Xと、あるいは汎用性に関してはアレグロACと、それぞれ互角の勝負をしている。唯一、情報量についてはZenSati Cherubと比べると分が悪い(Cherubは音の数を聴かせる)。

が、ここにOCEANICばりの3次元的な空間とシルバー・パラジウム合金がもたらすバツグンのメリハリ感が加わることで、KRAKENの情報コントロール力と音の分離感は、他と懸絶している。対抗馬は今のところ見つかっていない(したがってここでは、KRAKENが他のいずれに対しても圧倒的な優位を示した要素に関してはNo.1、部分的とはいえ際どい比較を強いられたものについてはMAXとして評価している)。

上で群雄割拠と述べたが、明確かつ異なった強みをもつ複数のケーブルが、各々の得意分野を武器に覇を唱える中に合って、このレベルの総合力とハイバランスを実現したケーブルは類を見ない(同様にハイバランス型のアレグロが、良いところなしに感じられるレベル)。高音がシルバー的で寒色系な点を差し引いても、現時点でKRAKENの汎用性は世界No.1と言えるのではなかろうか。

[主な特徴]

1.類を見ない重装備によるS/N対策の成果

まずもってKRANENと他のケーブルとを分かつのは、主としてS/N比の向上を目的とする装備(プラグ、シールド、他)の設計である。一般のオーディオ用電源ケーブルが、長さ4cm程度のプラグを用いているのに対し、KRAKENのプラグは完全に専用設計されたものであり、長さは9cmほどもある。実際に手に取っての感触から推察するに、重さは通常の製品の3〜倍はあると思われ、プラグ1つとっても桁違いの重装備と言える。シールド部の作り込みについて技術的な観点から考察するのは難しいため、詳しくは公式ページをご参照願いたいが、これらの重装備によってKRAKENは、アレグロやBLACK LABEL IIIを凌ぎ、JORMA PRIMEやTRANSPARENT PLMM2Xのような専用回路を搭載した電源ケーブルに勝るとも劣らないS/N感を実現している。

更に特筆すべきは、シールドの突き詰めによってこのS/N感を実現したことにより、専用回路を搭載することによる弊害を回避している点である。例えば、PLMM2Xであれば低域方面の周波数レンジに限界が感じられ、PRIMEであれば主に高音が(クァンタムピューリファイアー特有の)人工的な艶を帯びるのに対し、KRAKENは広大な周波数レンジ感を誇り、音色面の飾り気も少ない。

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KRAKEN(左)とJORMA PRIME(右)

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KRAKEN(左)とTRANSPARENT PLMM2X(右)

2.白金属パラジウムのステージ展開

結論から言うと、KRAKENのステージ展開は、これまで最高のステージ展開力を備えると認識していたBMI OCAENIC STATEMENTならびにPLMM2Xに比べて、更に1ランク優れたものである。

実際にスピーカーの音を聴いた限りKRAKENは、BMI OCEANIC STATEMENTばりの音場の広がりと、PLMM2Xばりの音像の定位感とS/N感を兼ね備える。つまり、OCEANICクラスの広がり・奥行きをもつ空間に、PLMM2Xと同レベルで音像が定位し、更に、音像の数と各像の解像感はK. Racing Audio DesignのDEVICE 0並みときている。

正直、褒めても褒め足りないレベルの実力なのだが、やはり特筆すべきは白金族パラジウムを導体に用いたことで、BMI OCAENIC STATEMENTに並ぶ奥行きを確保した点だろう。この点はPLMM2XとKRAKENの最も大きな差であり、尚且つ多くの電源ケーブルが実現できていない難題だと言えよう。

3.TRANSPARENT OPUSばりの低域

KRAKENの低音は、一聴してピンとくるものではない。DEVICE 0のように強烈な「落とし」で聴かせるものでもなければ、BMI OCEANIC STATEMENTのような最低域からの強烈な躍動すなわち「戻し」で聴かせるものでもない。むしろ、高音の繊細さと反応の良さを際立たせるかのように、これといった目立ち方はせず、しかし雄大で、周波数レンジもDEVICE 0ばりの広さを誇る。加えて、優れたS/N感からくる超低音の解像感・分離感は別格で、他の追随を許さない。演出は兎も角、性能面では並ぶもののない低域だろう。

KRAKENと非常によく似た低域のケーブルとして、TRANSPARENT OPUS MMがある。性能的な面でもそうだが、自己顕示欲や誇張感が感じられず、強大でありながら中~高音を慮るだけの器用さも備えている点が、共通する。

また、これはパラジウムの効能であろうが、深さ・重さに比してフットワークが俊敏で、中音・高音のスピード感と歩調が合っている。これはOPUSからは感じない点で、汎用性における大きな加点ポイントと言えよう。

4.ダイナミックレンジ感に優れる高音

これについてはSTAGE III CONCEPTS A.S.P. REFERENCEシリーズに共通する強さであり、そのクオリティはTRANSPARENTのOPUSシリーズと並び、最高の評価を二分するレベルだと思っている。S/N感に優れるKRAKENは中でもピカイチだが、場所がないため詳細は「STAGE III CONCEPTS(開設予定)」に掲載したい。

[ポジショニング]

どこに入れたとしてもその実力が陰るとは思えないが、やはりベストポジはパワーアンプだろう。振動に対して桁違いに強く、導体のキャパシティも巨大であるため、電力供給の安定感がまるで違う。高音の歪みは抑えられ、全帯域についてダイナミックレンジが押し広げられるような印象を受ける。現時点でベストな選択肢の1つであることは間違いない。

逆に、デジタルやプリアンプに使用するのはいささか勿体ない。もちろん、KRAKENが複数あって余っているのなら話は別だが、基本的にパワーに入れるのがベストだし、そうでないならば壁からコンディショナー・タップ・他へ引くラインを任せた方が、システムの底上げには貢献するだろう。

筆者の私見だが、プリはJORMA PRIME、NBS BLACK LABEL IIIあるいはBMI OCAENIC STATEMENTなど、実売レベルでKRAKENより安く、音も若干個性的なケーブルを複数所有し、使い分けた方が楽しめるし、音のバランスも取りやすい。パワーもKRAKEN、壁もKRAKEN、そしてプリもKRAKENでは、いささか温度感が低くなりすぎる、あるいは高音が精緻・繊細に偏りすぎる気はする。

[主な比較対象]

BMI, OCEANIC STATEMENT

TRANSPARENT, PLMM2X

Allegro Power Cable

K. RacingAudio Design, DEVICE 0

JORMA DESIGN, PRIME POWER

NBS BLACK LABEL III