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【イントロ】

 ネットワークオーディオプレーヤーなる製品が出現して久しい。ハイエンドにおいては長らく、LINNのKLIMAX DSに代表されてきたコンセプトだと思うが、ここ数年、新ブランドの台頭が著しい。今回、対象となるLUMIN(ルーミン)とSFORZATO(スフォルツァート)は、まさにそういった新興勢力の代表格と言えるだろう。

 本レビューは、知人の方よりお借りしたSforZatoDSP-01 & PMC-01を、拙宅のLUMIN S1と比較したものである。尚、予め断っておくと、S1とDSP-01 & PMC-01の間には、4倍の価格差(定価ベースで500万円近い価格差)がある。大雑把な例えだが、Wilson AudioのDuette Series-2とAlexiaの価格差が500万円くらいであろうから、大変な差である。比較はあくまで比較なので、容赦なく論じるつもりだが、S1をこき下ろしたいわけではなく(愛機でもあるし)、費用対効果はむしろS1の方がよいということは予め述べておく。

【外見的特徴】

 推奨されているクロックやNASのサイズも含め、DSP-01の方がシステムの規模は巨大。NAPでありながら、DCSやESOTERICのフルシステム並みの威容を誇っている。そういった方を想定したシステムなのかもしれない。とにかく、プレイヤーにせよ電源にせよクロックにせよ、筐体の頑強さは桁違い。プレイヤーは天板に穴が開けられているので、削り出されたアルミの分厚さがわかるのだが、相当な厚みである。

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 対するS1は、スマートでスタイリッシュな外観がウリ。LINNのKLIMAX DSの対抗馬として名乗りを上げていると思われる。NAP、電源、NASで3筐体なので、一概にコンパクトとは言えないが、DSP-01と比べればその差は歴然。

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 どちらも、全く別のベクトルながら、非常に美しい外観を誇る2機種である。音質やら何やらとは別軸で、所有欲を満たしてくれることは間違いない(尤もこれは、DSCやCH P.といったCDプレイヤーの高級機についても言えることだが)。

【試聴環境】

ネットワークオーディオプレイヤー(NAP)with ネットワークオーディオサーバー(NAS):

 LUMIN S1 with LUMIN L1

 DSP-1 & PMC-01 with DELA N1A

プリアンプ:Spectral DMC-30SS Series 2

パワーアンプ:DMA-360 Series 2(時々PASS X600.5)

スピーカー:WILSON AUDIO MAXX 3

ラインケーブル&SPケーブル:いずれもSpectral純正

電源ケーブル:MIT ORACLEがメイン

【総論(評価サマリ)】

 一聴して感じる違いは、音の分離。LUMIN S1も音の分離が悪いプレイヤーではないのだが、DSP-01のそれは別物。はっきり言って、音の分離が良いどころではない。完全に別の楽器であり、別の声。演奏においては、異なる楽器から異なる音が出るというのは当たり前の話だが、オーディオにおいては帯域が重なる音は同じユニットから出ている筈。それが、これほどまでのアイデンティティをもって聴こえるものか、と感心する。

 DSP-01の音の分離は、ノイズフロアの低さ、音場の広がり、脚色の少なさなどに起因する。詳細は、音源別のレビューで述べよう。

 対するLUMIN S1の持ち味は、血の通った濃厚な音楽表現だろう。オーディオショウでKRELLやFM ACOUSTICSで鳴らしているブースで感じられるような熱気を、S1は備えている。拙宅のSpectralもそういった傾向のある機器なので、相性が良く、愛用している。

【各論(音源ベース評価)】

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 1曲目はクラシック。曲は、Tchaikovsky: Cossack Dance from Mazeppa。Reference Recordingsによるハイレゾ音源。圧倒的な躍動感と軽やかさ、そしてスケールの大きな表現が魅力的な音源だ。

 この音源について言えば、音質はDSP-01の圧勝だ。いかにS1が血の通った表現をするとは言え、DSP-01レベルのノイズの少なさと音場の広がりでオーケストラの再現をされると、敵わない。音場が混濁しないという点に関して、DSP-01は特筆すべき能力を備えており、この曲ではその能力が遺憾無く発揮されている。なお、躍動感やスピード感についてはほぼ互角。いずれもCH P.やGOLDMUNDのSACDプレイヤーのようなキレッキレのサウンドという訳ではない。余談だが、スピードについてはアンプのドライブ力が音質に影響するファクターとして大きいやもしれない(拙宅のSpectralとPASSとの比較からそう感じる)。

 ヴァイオリンは、キレと伸びやかさにおいてはDSP-01が上。ちなみに、キレ味の表現は静的で、圧倒的な聴感解像度とローノイズからえぐり出すような表現。保存状態がよく、陰影が豊かな彫刻を思い浮かべていただくと良いやもしれない。逆に、アナログライクな温かみや艶っぽさについてはLUMIN S1が得意とするところだろう。

 ティンパニの表現は、素直にDSP-01の方が魅力的だ。周波数帯域は上にも下にもより広く、より重層的。オーディオ的な経験上、電源とクロックの物量が成せる業だと思われる。S1のみならず、KLIMAX DSや単一筐体のSACDプレイヤーではほぼ不可能ではないかと思われる表現力。

 管楽器全般については、ジャズ(April in Paris)の項で詳述するが、やはり歯切れの良さと音のほぐれについてはDSP-01がよく、艶っぽさについてはS1の方がある。

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 2曲目はロック。曲はEagles – Hotel California Live (Hell Freezes Over 1994)。アコースティックギターの多用を特徴とするライブ音源で、とても録音がよい。ロックに詳しい人間ではないが、筆者がこの曲から感じるのは歪み、危うさ、退廃といったイメージ。

 一聴して、DSP-01の方がややドライな表現をしていることが分かる。カリフォルニアの乾いた空気感の再現が重要だというのなら、それはDSP-01の方がうまい。温度感もやや低く、時間帯でいうならS1よりもやや遅い時間帯をイメージさせるやもしれない。一方で、そのサウンドはストレートかつ明瞭で、歪みや揺らぎを脚色するものではないだろう。対するS1のサウンドは、よりウェットで艶っぽい。エロティックな退廃については、間違いなくこちらの方が表現がうまい。ただし、比較的ライトで温度感も高い表現なので、私の知るカリフォルニアから想像すると、夕暮れ少し前くらいのイメージかもしれない。そんな情緒的な話はこのくらいにして、各論に移ろう。

 ドン・ヘンリーのヴォーカルは、DSP-01の方が陰陽コントラストが明瞭。目の前で歌っているようなリアルさは絶品。ヴォーカルミュージックはそのアイデンティティのかなりの部分を歌手に依存していると思っている。例えば、ヴォーカリストの死によってバンドが解散する例は歴史的に少なくないと思うし、そういう曲を今聴きたいと思ったら、オーディオに頼るしかない。そういう意味で、DSP-01がもたらす音像のリアリティは貴重だ。

 一方で、同じことはS1の温度感についても言える。この音源はライブ音源なのだが、冒頭とラストにある観客の拍手とシャウトの熱気は素晴らしい。細部を明瞭に描き出す能力はDSP-01の方が上だが、細かいことをさておいて会場の熱気を感じる目的ならば、S1のパフォーマンスが優れる。

 打楽器(ボンゴ)は、DSP-01の方が聴感解像度が高く、シャープでタイト。S1の方が厚みがあるが、表現上正確なのはDSP-01の方ではないかと思われる。

 アコースティックギターの評価はヴァイオリンのそれに近く、えぐり出すような克明さからくるキレ味が魅力のDSP-01と、弦の生っぽさ・艶っぽさが魅力のS1といった違い。

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 3曲目はジャズ。曲はCount Basie – April In Paris。ホテル・カリフォルニアとは打って変わり、前向きさ、明るさ、リズム(ノリ)のよさが魅力的な音源。筆者が4月にパリに行った際に暖かいと感じたかはさておき、音楽から受ける印象はウォーム。

 一聴した印象が良いのはS1の方。もちろん音のクオリティはDSP-01の方が上なのだが、ウォームで明るいノリをより再現しているのはS1の方(もし曲のテーマがMarch in Parisだったら、DSP-01が圧勝していたに違いない)。なお、音のクオリティが上というのは、オーケストラと同様に、ビッグバンドジャズのスケール感とディティールを両立しているという意味。詳細は後述するが、このレベルはSACDプレイヤーの高級機であってもなかなかに得難いレベル。

 トランペットは、歯切れのよさ、音のほぐれのいずれもDSP-01の方がよい。なんともシルキーでスムーズな表現ながら、時折カチッと決めてくる。ちなみに、奏者の粗についてもそのままに出してくることから、器用で上手であるというより、原音忠実な音なのだと思う。対して、繰り返しになるがS1の魅力はウェットで艶やかな表現。こちらはある程度の脚色を含むものだと思われ、それが証拠にトランペットは曲を通じて暖かさがあって聴きやすい。

 ドラムはDSP-01の圧勝。上の2曲では、打楽器は単発で大きく深く鳴らす表現が多かったが、この曲においては連打が多く、DSP-01においてはその音離れの良さが際立っている。時々、ぞっとするほど。これに対しS1で聴くドラムは、あくまで普通である。

 ベースは、S1の方が厚みをもってブンブンいう印象。DSP-01のベースは、怜悧で無駄な動きをしない。クオリティでいうならやはりDSP-01だが、好みの問題もあるところだと思う。

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 4曲目もジャズだが、こちらは女性ヴォーカルものだ。曲は、Norah Jones – Don’t Know Why。なんと言ってもNorah Jonesの伸びやかなヴォーカルは絶品だろう。また、後悔や切なさといった女性的でウェットなテーマも含む一曲だと認識している。

 ウェットなテーマの表現についてはS1の方が適していると感じる。DSP-01の描くNorahからは、後悔や不完全さがあまり感じられない(ヴォーカル表現それ自体の完成度が高く、しっかりした人物に思えてくる)。

 それとは別に、ホテル・カリフォルニアの項でも言及したが、DSP-01の描き出すヴォーカルは克明。やや温度感は低めで、生っぽさはS1の方があるものの、手を伸ばせば触れられるかのようなヴォーカル表現はやはりDSP-01の得意とするところだ。

 また、ヴォーカルの伸びやかさについてはDSP-01が優れる。上までスッと抜けてゆく様は、聴いていて気持ちが良い。

 ピアノは、精度についてはDSP-01、生っぽさについてはS1。そろそろ繰り返しもくどいので簡潔に述べるが、S1では埋もれてしまう奏者の細かいタッチや息遣いが、DSP-01だと聴こえてくる。

【こんな人にオススメ】

 聴いた限りDSP-01は、現在SACDプレイヤーをお使いのほぼ全ての方にオススメできる。DSP-01は、NAP特有の圧倒的なユーザビリティと最高レベルの音質を両立する稀有なNAPである。しかも、ニュートラルと言って差し支えない傾向の音であるのと、NASも含めて4本の電源ケーブル、1本のBNCケーブル、そして2本のLANケーブルを必要とするシステムなので、ケーブルを工夫することで音を如何様にも変えられる。現在CH P.をご使用の方ならCH P.に近い音を、KRELLをご使用の方ならKRELLに近い音を、DSP-01で再現することは可能な筈である。

 対するS1は、費用対効果がよく熱気の溢れるNAPをお探しの方にオススメできる。このS1、なんとオーディオ製品にしては珍しく、最近値下げをした。これによりS1は、KLIMAX DSの半額少々の値段ながら、クオリティ的に張り合う存在となった。日進月歩のNAP業界だが、S1はその中にあって間違いなく一級の実力を備えている。しかも、外見は非常にスタイリッシュである(MacBook Proと並べても遜色ない)。これはこれで、多くの方にオススメしたい。

【DSP-01とSACDプレイヤー】

 これは他サイトでもちらほら散見される意見だが、DSP-01 & PMC-01の音質は、市場に出回る大部分のSACDプレイヤーを上回るものだろう。こうなると、いよいよ500万円クラスのSACDプレイヤーの存在意義が危ぶまれる。筆者が自宅試聴した中で最も音のクオリティが高かったSACDプレイヤーはCH P.のD1だが、(きちんと比較したわけではないものの)音を聴いた時の衝撃はDSP-01 & PMC-01がやや上回る印象だ(前提として傾向の異なる両者ではある)。もちろん、使い勝手はネットワークプレイヤーの方が圧倒的に良いから、そうするとSACDプレイヤーを所有する意味ってどこにあるんだっけ?という議論にもなりかねない

 ちなみに全くの余談だが、DSP-01 & PMC-01の物量はラックによっては収まらない気がするので、その意味では「お手軽」とは言い難いかもしれない。SACDプレイヤーでいうと、VIVALDIあたりがライバルになるから、どなたか比較レポートをお願いしたいところ。