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前編はこちらになります。

【音質(個別)】

■試み

 筆者はDMA-360 Series 2の導入後しばらく経った頃、世界でも屈指のRCAケーブルを買い集めた。まことしやかに囁かれる定説(SpectralとMITのマリアージュ)の真偽を検証し、仮に真のベストマッチを見つけ出したならば声高に発信したいという、子供じみたオーソリティーへの反抗心からである。ラインナップはTransparent Opus MM2とStage iii Concepts A.S.P. Gryphonで、しかも2セットずつ買い集めてきたのだからどうかしているのだが、この比較によってSpectralアンプ単体での効能と各ケーブルの効能が明らかになった。詳細はこちら

 

1.アンプのみの効能(プリ&パワー)

 まず、Spectralアンプ単体での能力について述べる。結論からいえば、Spectralアンプの魅力は、広大でフラットな周波数レンジ、ハイスピード、そしてサウンドステージの広がりである。工学的な理解に乏しいロメオだが、なんとなく「アンプはスペック重視で設計したのだろうな」と思うような長所である。

 逆に、ケーブルを含むシステムで鳴らした時の音楽の生っぽさや温度感は、アンプ単体だと影を潜める印象だ。詳細は後述するが、このあたりはMITのケーブルによって補われている要素だと感じた

 

2.ケーブルの効能

 続いて、ケーブルの話だ。前述の通り、Spectralのアンプに使用するケーブルは、同社によってMIT社製が強く推奨されている。

 しかし、筆者はそれとは別に、素晴らしいケーブルを知っていた。TRANSPARENTのOPUSを筆頭に、ZenSatiのSeraphim、Stage iii ConceptsのGryphon、StealthのSakraなど、具体例を挙げればキリはない。特にOPUSは初代ですらが、これまでのほぼあらゆる比較において、他のケーブルを突き放す圧倒的パフォーマンスを示してきた。そして、そのOPUSが、SpectralアンプとのマッチングだからといってMITに劣るだろうか?との疑念も強かった。そんなわけで、上述のTRANSPARENT OPUS MM2とStage iii Concepts A.S.P. Gryphonを、MIT ORACLE MA-X2と比較した。もちろんアンプはSpectralのセパレートである。

 結論だが、Spectralのアンプとのマッチングにおいては、MITが圧勝する。それは、Spectralのアンプがケーブルに期待することは、性能全般の底上げではなく、音楽の熱気(温度感)とインパクトを強めることだからだ。そして、それらはいずれもMITのケーブルが他を圧倒する領分で、さすがのOPUSやGryphonをもってしても、その聖域を侵すには至らなかった(詳しくはこちら(リンク)を参照)。詳細は後述するが、Spectralの「MIT以外のケーブルを使った際の修理が云々」というスタンスも、実際はスペックではなく音質的な相性からくる問題である可能性は否めない。

 

【費用対効果】

1.アンプ単体での費用対効果

 前提だが、プリとパワーのみをセットで使用した場合の感想である。前述した通り、SpectralのアンプはMITのケーブルを抜きにしても、ワイドかつフラットな周波数帯域、ハイスピード、広大な音場を誇る。性能面での費用対効果は、単体での費用対効果は良いと言えようこれは、プリのDMC-30シリーズ然り、モノラルパワーのDMA-360 Series 2然り、ステレオアンプとして日本でよく知られるDMA-260 Series 2然りである(DMA-200 Series 2でMagico Q3を鳴らされている方を知っているが、よく鳴っているとのこと。詳細はこちら)。

 確かに、Spectralアンプ単体での使用は、パンチの不足や音色の暗さを伴うが、これらはMITケーブルでなければ必ずしも補えない欠点ではない(が、ハイエンドのケーブルはどれも高いので、費用対効果はよくない)。MITでなくとも、暖色系のケーブルをお持ちの方であれば、バランスを保ったままリスニングを楽しめると思う。拙宅では、G Ride Audioの各種ケーブルは比較的相性が良かった。また、ZenSati Seraphimのような、温度感が高い&音のパンチを捨てて音場の広がりに振り切ったケーブルと組み合わせると、MITと組み合わせても得られない広大な音場が出現する。これはこれで魅力的である。また、パンチで言うと、オーディオ目玉親父さんからお借りしたCrystal CableのAbsolute Dreamは、MIT ORACLE AC1以上だった(詳細はこちら)。既にCrystal Cableでシステムを固めている方は、Spectralを選択肢に入れても悪くないと思う。逆に、寒色系のケーブルと組み合わせることは勧めない。例えばStealthのケーブルなどと組み合わせると、精彩を欠いた音になるだろう。

 

2.アンプ&専用ケーブルでの費用対効果

 SpectralのアンプにMIT製の専用ケーブルを組み合わせた場合の費用対効果は抜群だ(MITとは言っても、この場合は本家のORACLEシリーズではなく、Spectral/MITケーブルを指している)。

 特別な理由がなければ、SpectralのアンプにはSpectral/MITケーブルをセットにすることを勧める。一昔前は、Spectral/MITケーブルは高価な部類に含まれたが、今となっては一般的なケーブルの範疇である(それくらいハイエンドケーブルの値段高騰は顕著)。

 余談だが、Spectral社としては、アンプとケーブルを揃えることで、Spectralとしてのミニマム、というスタンスのようである。

 

3.Spectralケーブル単体での費用対効果

 Spectralケーブル単体での費用対効果はイマイチだ。具体的には、MITの中級機種と同等(MITはORACLEまでいかないとイマイチ効能を実感できない印象)。そもそもこのケーブルの存在意義は、性能の向上というよりはSpectralアンプの欠点を補うことなので、このケーブルを単体で用い、Spectral以外の機材と組み合わせる意義は無いだろう

 

4.アンプ&ケーブル&推奨スピーカーでの費用対効果

 Spectral社は、リファレンススピーカーとしてAVALON、WILSON、MAGICOを推奨している。ただ、これらはいずれも高額なスピーカーなので、スピーカー込みの場合での費用対効果が良いとは言い難い(例えば、スピーカーとしてはB&Wの800D3などの方が費用対効果は良い)。

 ちなみに筆者はこれまで、AVALON、WILSONのスピーカーとSpectralのアンプを合わせてきたが、これらの組み合わせでなければ出せない音があるのは確かだ。WILSONのMAXX 2やAVALONのDIAMONDのように、まぁまぁ能率の悪いスピーカーを鳴らすにはモノラルアンプをオススメするし、WILSONのSophiaクラスやSashaクラスを鳴らすならステレオアンプで十分だ。

 なんにせよ、広大でハイスピードな音場展開を魅力とするSpectralのアンプで、AVALONやWILSONといった音の後方展開を十八番とするスピーカーをドライブするので、空間表現は抜群(世界最高峰のコンビネーションといって差し支えない)。その世界観に惚れ込んだら、ローンを組んででも導入すべし!

 

【アンプメーカーがケーブルを指定する意義】

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 Spectralは、アンプ屋ながらケーブルも製造する数少ないメーカーのひとつだ(他には、FM ACOUSTICS、CH P.、GOLDMUNDなどがある)。

 筆者としては、アンプ屋が専用ケーブルを製造する、もしくは指定するスタンスには、音の品質管理の観点から大いに意義があると考える。多くの皆さまがご存知のように、ケーブル界は混迷を極めている。ハイエンドを自称する多くのブランドが乱立するものの、どのメーカーがどういった個性の音で、どういったアンプと相性が良いかなど、分かったものではない(筆者のように、馬鹿みたいに聴き込んでようやく少しばかり分かるくらいの肌感覚だ)。つまり、多くのオーディオファイルたちは、何がベストかを自らの耳で知らぬまま、評論家やショップ(つまりは、真理よりも商業的な利害に縛られた存在)の言葉に沿ってケーブルを購入しているのだ。これでは、真の納得感などあろう筈もない。

 が、筆者ですら、ケーブルとアンプの相性までは殆ど分からない(どんなオーディオファイルでも、自身の経験から分かる範囲など極めて狭いだろう)。自分で言うのも何だが、これだけ聴いても、まだまだ分からないことは多いのだ。この状況下において、アンプにぴったりなケーブルを提案できるのは、アンプの特性を深く知るメーカーだからこそだろう。例えば、Spectralにおいては、他のケーブルよりも専用であるMITのパフォーマンスが良いというのが、実際に色々と購入し、聴き比べたロメオの結論である。また、FMやGOLDMUNDの専用ケーブルは、今の時代にあって、他社の多くのケーブルと比べても、圧倒的に安価で、迷わず購入できる選択肢だ。無論、我々のようなアマチュアも、ネットを介して様々な情報発信は行うべきだろう。例えば、筆者はPASSのX600.5と言うアンプを所有しているが、このアンプは、リファレンスと言われるNORDOSTのケーブルよりもJORMA DESIGNのケーブルの方が相性が良いと思っている。これは一例だが、オーディオファイルは(他の人たちのためにも)その手の情報を発信すべきだろう。だが「これなのだ!」という確定的な情報の発信は、やはりメーカーにこそお願いしたいというのが、アマチュアとしての本音である